人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ミッション3

こうして「知的な弁護士風」を装うことになり、私はいかに自分が粗野でしつけの行き届いていない野生児なのかを思い知った。

正直スマホ交換云々よりも、その発見の方が私には大きかったぐらいである。

まず店に入り、番号札を取るところからして大変であった。背筋を伸ばして指先にまで気を配り、滑らかに1枚を抜く。

そして上着を脱いで座るのだが、この時点で「これは結構大変なことっぽいぞ」と悟った。

それだけのことを上品に見せるのが、難しいのである(笑)

すぐにスタッフが現れ、「今日はどうされましたか?」と聞かれる。

私は首だけ軽くそちらに向け、かくかくしかじか説明する。

ここでも発見。

いつも私は早口過ぎるのだ。

落ち着きがなさ過ぎるのだ。

動かないで喋ることがこんなに難しいとは。

どうやら私はいつも、身振り手振りを大きく交えて首もブンブン振っていたようである。

ひと通り話しきると、軽く首を傾けて口をあけずに微笑む。すげー芝居だ。

席に案内されてからもこんな調子で、気を抜くと早口になりそうで、手が出てきそうで首をブンブン振りそうで危なっかしい。

たとえば、「はい」のひとことですむ所を、普段の私は「はいはいはいそうなんですそうなんです」と何度も首を縦に振りながら言っていた。

逆に「違います」の場合は「いえいえいえいえそうではなくてですね、」と横に首を振りつつ手もブンブン。

私は他人を恐れているのである。

嫌な印象を持たれたくない。

私はあなたが好きです。

あなたの味方ですよ。

それを無意識に表現しようと思い、あたかも犬がお腹を見せて忠誠を示すが如く、身振り手振り言葉でへりくだる。

結果、もうすぐ50になろうという人間が、「テヘペロ」的愛嬌を必死に振りまいていたのであった。

ときに、最近また喉の結節を治すことを考えていたのだが、リハビリの先生にも早口で喋り過ぎる点を指摘されていて、そういうタイプの人は往々にして喉に負担をかけると言われていたことを思い出した。

落ち着け、ぽ子よ。

もっと自分に自信を持って、他人を信じようじゃないか。

ここで私は今後、もう少し「知的弁護士風」に生きることを目標にした。

で、肝心なスマホだが、まったく滞りなく新品に交換して貰うことができた。この1回だけ、という条件付きだったが。

果たして私の「知的弁護士風作戦」がどこまで功を奏したのかは分からない。

こんなアホみたいなことをしなくても、普通に交換してもらえる案件だったのかもしれない。

それでも大きな発見があったことが収穫である。

今後私はちょっとばかり大人な女になっているはずだが、暖かく見守って欲しい。

生まれて初めて「わたくし」とか言っちゃったもんね、アハハEE:AEB64