合唱団の練習の休憩時間のことだ。
生放送のテレビ番組に木村拓哉がサプライズで出演した時、客席は騒然となったそうだ。
中には泣いている女の子もいたとかで、「泣く??出てきただけで泣くって、どういう感覚なんだろう??」という話になった。
「例えば、目の前に誰が出てきたら泣くと思う?」
そう振られて、考えた。
感激して泣くのだから、会いたい人だろう。それも相当に。
そしてまず会えないはずの人になるだろう。
ただ会いたい人なら何人もいるが、すぐに会えるなら泣きはしない。
ものすごく会いたくても、会えない人。
・・・・・・。
その人のことはまずおいておく。さすがに恥ずかしいからだ。
もうちょっと現実的な線で考えてみた。
会えない人。
物理的に距離がある人。
どこにいるか分からない人。
世界が違う人。
これに合致するのは、外国のミュージシャンぐらいだ。
しかし別に会いたいとは思わない。会ってどうするのだ、話が続かん。
なので泣けるほど感激はしない。会いたいと思わないからだ。
となると、私には「その人」以外に、涙して出会う可能性がある人間はいないということになる。
「ゲームのキャラクターなら絶対に会えるはずはないので、もし目の前にいたら泣くほど感激すると思います(思わず胸がホワ~ンとしてしまった)。」
「えっ、ゲーム・・・EE:AE5B1」
やはりドン引きだったが、それに続いた彼女はこう言った。
「そういうのもいいんですか?じゃあ私は
バッハですEE:AE595」
ば、バッハ。
そして恐るべき周りの反応は、「へー、バッハねぇ。」と、普通だったのである。
そればかりか、ナントカいう死んだ指揮者の名前が次々飛び出してきたのだ。
ソプラノ隊はバッハに会って涙する感覚は理解できても、私がバルフレアに会って涙することは理解できないようである。私には大して変わらないのだが。
この後バレエダンサー(存命)と続き、いよいよ私の居場所はなくなった感があるが、先生が思いがけずまともな答えを言った。大沢たかおである。
先生は実際に会ったことがあるらしいのだが、そのカッコ良さ、オーラ、存在感は物凄かったらしい。
その後に比較対象として出された木村拓哉など、やはり会ったことがあるらしいが、あれに比べれば普通の人間だというぐらいである。
こんな話をしているうちに、休憩時間は大きくオーバーした。
ちなみにこの話の前には、貧乳の悲劇について言い合っていた。
まるで女子高の休憩時間のようになっていたが、その日たった一人の男性であったもっきゅんは、聞こえていたのかいないのか、黙々と楽譜を読んでいた。
エテュード合唱団、男性も広く募集中。