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「逃げよう。このままじゃ殺されるのを待つだけだ。」
深夜、私達は屋敷の暗い地下に集まって、話し合っていた。
メイドのブリジット、庭師のダグラス、執事のイスカリオット、コックなど何人も入れ替わっているので初めて見る顔も多い。
「あんたは長いけど、いつアイツの気が変わるか分かったもんじゃないからね。悪い事言わないから、簡単に荷物をまとめておきな。」
アイツの8人目の情婦となってから、何ヶ月が経っただろうか。
これまで何人もの人間が、アイツの手によって目の前で殺されていった。
気分次第である。
しかし私はもう恐怖を感じなくなっていた。
どこにいたって、死ぬ時は死ぬのだ。
諦めにも似たような気持ちだったが、その時私は熱い視線を感じていた。
「俺達と逃げるんだ。」
保全のター坊が強い口調で言う。
分かっている、それが一番いい事なのは。
でもなぜ、気持ちが揺れるのだろう。
それぞれが、小さなバッグひとつを持って再び屋敷の裏に集まったのは、小一時間ほど経った頃か。
見つかったら殺される、早くここを離れなくては。
その時、暗がりからアイツが現れたのである。
皆、一斉に散った。
しかしこれも、予定通りである。
もし見つかったらひとつにかたまらずに散り、ひとまず隠れてから、合図があって攻撃。
ナイフ、拳銃、そう言った武器を、ダグラスとイスカリオットが少しずつ集めておいてくれたのだ。
しかし私は動けなかった。
簡単に捕まり、アイツに強く手を掴まれる。
私達はそのまま長い間、睨み合っていた。
やがて強く抱きしめられ、私は確信する。この人が好き。
しかし今アイツは私の背中に、いつものあのサバイバルナイフを握っているのかもしれないのだ。
愛し合っているという希望と迫り来る死の恐怖の間で揺れながら、やがてアイツが殺されるのを待つ。
この人を殺さないで。
そしてアイツの手にも、力がこもる・・・。
と、いうような夢を見ていたのだ。
なんてドラマティックな夢なの!!
恋愛においてそのような経験はもちろんないし、演劇部に所属していた事もない私には大変刺激的な夢であった。
ちなみに「アイツ」は醜い変態のような容姿ではなく、パイレーツオブカリビアンのジョニー・デップのようなイケメンである。
あぁ切ない。
彼が殺される前に目が覚めて良かった。
しかし実際に目が覚めた私は、心臓が飛び出すかというほど驚いたのだ。
まだ部屋は暗かったが、ボンヤリと目の前に浮かび上がったそれは、首をつってグエーって顔になってる頭だったのである。
あまりの恐怖に目を閉じることができなかった。
ありえない。
幻覚?夢?
目を凝らすとそれは、こちらを向いた、去年から出しっぱなしの扇風機であった。
チョーびびったEE:AEB64
ドラマティックな夜だった。