人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

父の日であった

「すもう700。」

前の車のナンバーを見て、娘ぶー子が言った。

金曜日に漢字検定を受けたばかりであった。

皆が爆笑したら、

「さ、さばく700っ。」

と慌てて言い直した。

さらに笑いが盛り上がると、

「アイモ!!」

と訂正し、その後やっとつまらなそうに、「さがみか。」と言った。

将来が不安である。

今回宿を選ぶにあたって、食事がうまいと評判のところであること、エル連れなので食事が部屋出しか個室であることにこだわった。

うまいことこの2つを満たした宿を見つけたのだが、いや~~、余は満足であった。

「エルも満足にゃ♪」

腹がはち切れんばかりの夕食が終わると早速眠くなったが、「ゲーム大会だ!!」とぶー子が寝かせてはくれない。

この時のために、トランプ、罰ゲームカード、グラスというカードゲーム、プレステ2にDSまで持ってきたのだ。

「まずはこれだよね。」

DSである。

前回の泊まりのキャンプでは「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の対戦をしたが、このゲーム、対戦できるのは「計算」だけである。

そもそも算数がもの凄く苦手だが、酔っ払いに延々計算で競争をさせるのだ。

そんなものはゲームとは言わない。

ところがその続編にあたる「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、対戦モードの内容がグッと増えたそうだ。

早速みんなで対戦しようという事になったのだ。

早く気付くべきであった。

「脳を鍛える」などというタイトルに、遊びの要素などないのだ。

確かに対戦の内容は増えていたが、428円の物を買う時、1035円出したらお釣りはいくら?だとか、ちなみにこれも延々繰り返されるのだが、この間の計算バトルと大差ない。

いや、はるかに複雑になっていた。

他にもバラバラになった漢字の部署をあわせて1文字作るとか、やればやるほど萎えるものばかりであった。

その中でお絵かきバトルがあった。

お題に沿って絵を描くだけなのだが、終わったらみんな、自分以外の人の絵に投票するのだ。

「お絵かきがいい。」

「もう1回。」

「お絵かき。」

私もぶー子もしつこい程これしかリクエストをしなかったので、左脳人間のダンナはウンザリしていた。

とうとうお絵かきバトルのお題を全部描き切って、「疲れた・・・、もうDSはいい。」とダンナが脱落した。

眠かった私はこの頃にはワインのボトルを1本空けて、ゴキゲンになっていた。

じゃあ2本目いこうか、と次のボトルをフン掴むと、ああっ!?

なんと、そのボトルは飲みかけで、半分しか入っていなかった。

しもたー、間違えて飲みかけ持ってきてしまった。

まだまだ夜は長い。

この量では足りないことは明らかだ。

「行くならエンタが始まる前に行っちゃいたいんだけど。」

ダンナが言ったのは、9時半頃であった。

近くにコンビニがあったのだが、むー、それではそろそろ行くか、と腰を上げると、

「ぽ子は来なくていい。余計に時間がかかるから。」と言われてしまった。

具体的にどうしてそうなるのか、今になって気になってきたが、「じゃ、私が一緒に行く。」とぶー子が立ち上がると「ウン、じゃあ行こう。」と素直に連れて行ってしまった。

何となく屈辱的である。

せっかくわざわざ買いに出てくれたのだ。

ちゃんと飲まないと申し訳ないので、意識してガンガン飲んだ。

しかし、エンタが終わってプレステで遊んでいるうちに、一番先に寝てしまった。

コンコンコン、とノックの音で目が覚めた。

しまった、朝食の時間になってしまったか。

慌ててドアに走り、「すみません、今起きました。」とバカ正直に言うと、「それじゃ、もうちょっとしてからまた来ます。」と言ってくれた。

すんませんのー。

朝もまた苦しいほど食べてしまったので、帰りの車はほとんど寝ていた。

エルは自分なりの車での過ごし方が定着してきたようで、行きよりも落ち着いていたので安心した。

こうして外を見るのに飽きると、キャリーバッグの中でぐっすり寝てしまった。

「まずは少し寝るか。」

家に着くとそう言ったが、「いや、お疲れ会でしょう。」とダンナ。

なので、また飲んでいる。

父の日だが、こうなるともうシナリオなどメチャクチャである。

今年は地味な日になってしまいそうだ。

ごめんちゃい。