「すもう700。」
前の車のナンバーを見て、娘ぶー子が言った。
金曜日に漢字検定を受けたばかりであった。
皆が爆笑したら、
「さ、さばく700っ。」
と慌てて言い直した。
さらに笑いが盛り上がると、
「アイモ!!」
と訂正し、その後やっとつまらなそうに、「さがみか。」と言った。
将来が不安である。
今回宿を選ぶにあたって、食事がうまいと評判のところであること、エル連れなので食事が部屋出しか個室であることにこだわった。
うまいことこの2つを満たした宿を見つけたのだが、いや~~、余は満足であった。
「エルも満足にゃ♪」
腹がはち切れんばかりの夕食が終わると早速眠くなったが、「ゲーム大会だ!!」とぶー子が寝かせてはくれない。
この時のために、トランプ、罰ゲームカード、グラスというカードゲーム、プレステ2にDSまで持ってきたのだ。
「まずはこれだよね。」
DSである。
前回の泊まりのキャンプでは「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の対戦をしたが、このゲーム、対戦できるのは「計算」だけである。
そもそも算数がもの凄く苦手だが、酔っ払いに延々計算で競争をさせるのだ。
そんなものはゲームとは言わない。
ところがその続編にあたる「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、対戦モードの内容がグッと増えたそうだ。
早速みんなで対戦しようという事になったのだ。
早く気付くべきであった。
「脳を鍛える」などというタイトルに、遊びの要素などないのだ。
確かに対戦の内容は増えていたが、428円の物を買う時、1035円出したらお釣りはいくら?だとか、ちなみにこれも延々繰り返されるのだが、この間の計算バトルと大差ない。
いや、はるかに複雑になっていた。
他にもバラバラになった漢字の部署をあわせて1文字作るとか、やればやるほど萎えるものばかりであった。
その中でお絵かきバトルがあった。
お題に沿って絵を描くだけなのだが、終わったらみんな、自分以外の人の絵に投票するのだ。
「お絵かきがいい。」
「もう1回。」
「お絵かき。」
私もぶー子もしつこい程これしかリクエストをしなかったので、左脳人間のダンナはウンザリしていた。
とうとうお絵かきバトルのお題を全部描き切って、「疲れた・・・、もうDSはいい。」とダンナが脱落した。
眠かった私はこの頃にはワインのボトルを1本空けて、ゴキゲンになっていた。
じゃあ2本目いこうか、と次のボトルをフン掴むと、ああっ!?
なんと、そのボトルは飲みかけで、半分しか入っていなかった。
しもたー、間違えて飲みかけ持ってきてしまった。
まだまだ夜は長い。
この量では足りないことは明らかだ。
「行くならエンタが始まる前に行っちゃいたいんだけど。」
ダンナが言ったのは、9時半頃であった。
近くにコンビニがあったのだが、むー、それではそろそろ行くか、と腰を上げると、
「ぽ子は来なくていい。余計に時間がかかるから。」と言われてしまった。
具体的にどうしてそうなるのか、今になって気になってきたが、「じゃ、私が一緒に行く。」とぶー子が立ち上がると「ウン、じゃあ行こう。」と素直に連れて行ってしまった。
何となく屈辱的である。
せっかくわざわざ買いに出てくれたのだ。
ちゃんと飲まないと申し訳ないので、意識してガンガン飲んだ。
しかし、エンタが終わってプレステで遊んでいるうちに、一番先に寝てしまった。
コンコンコン、とノックの音で目が覚めた。
しまった、朝食の時間になってしまったか。
慌ててドアに走り、「すみません、今起きました。」とバカ正直に言うと、「それじゃ、もうちょっとしてからまた来ます。」と言ってくれた。
すんませんのー。
朝もまた苦しいほど食べてしまったので、帰りの車はほとんど寝ていた。
エルは自分なりの車での過ごし方が定着してきたようで、行きよりも落ち着いていたので安心した。
こうして外を見るのに飽きると、キャリーバッグの中でぐっすり寝てしまった。
「まずは少し寝るか。」
家に着くとそう言ったが、「いや、お疲れ会でしょう。」とダンナ。
なので、また飲んでいる。
父の日だが、こうなるともうシナリオなどメチャクチャである。
今年は地味な日になってしまいそうだ。
ごめんちゃい。