我らが聖地、POPROCKの閉店も、いよいよ迫って来た。
最後の時間を惜しむように、このところ連日仲間達が押し寄せてきている感じであった。
本編のライブが終わっても、いつもの顔ぶれがセッションタイムを狙いつつ飲んでいる。
そんな時、「ぽ子ちゃん、ツェッペリンやってよ、ツェッペリンEE:AE482」。
古くからの常連・スーさんは、自らステージに上がることはなく、こうして仲間をいざなうのが常だ。このセリフも何度聞いたことか(笑)
メンバーは揃っていた。
すぐにできる曲が少ないこともあり、いつもみんな消極的だ。
それでも観念して演奏する曲は非常に限られていて、「またアレをやるのか?」という感じである。
しかも翌日に本番を控えているので、その曲は出したくない。
「コミュニケーション・ブレイクダウンでいこう。」
まぁ私はスマホで歌詞を見ればカラオケ状態だから、曲さえ知ってれば何でもいい。
この曲なら何度かやってるし、そんなに高いハードルでもないでしょ。
以前ライブでやった時には前日のリハで声を嗄らせ、ほとんどまともに歌えなかったという屈辱の1曲であった。
ここでこの曲をやるのも、最後になるだろう。
あの時の雪辱を晴らすように、できるだけ丁寧に歌っていく。
ギターソロ。バトンを渡す。一同は、ギターに注目する。
やがてまた私にバトンが戻ることになるのだが、その時になって思い出した。歌、どっから入るんだったっけEE:AEB2F
ヤッベーなどという顔はできない。シレッとリズムを取りながら、「何小節目だったっけ、ってかもはや今何小節目なのかが分からん、しかも、」しかも、この曲のギターソロの尺は中途半端な尺だったはずである。
だいたい間奏やソロの小節数は2か4の倍数であることが多いが、この曲のソロは奇数だったのだ。
そこが重要な注意点で、何度も確認し合ったものだ。
恐らくギターのユーちゃんは、この尺を守るだろう。
ベースやサイドギターが多少乱れてもすぐに建て直せばそんなに目立たないが、私はバトンを受け取ってすぐに歌に入らなくてはならない。
リズムを取りながら、サイドギターのダンナを見る。私はいつも構成に迷うと、ダンナの顔色で判断するようにしているのだ。
わざと困った顔をしてダンナを見ると、ダンナも泣き笑いのような顔をして返した。ダメだ、ダンナも遭難中EE:AEB64
曲はどんどん進んでいく。
もはや何小節目かはさっぱり分からないが、偶数か奇数かなら分かる。
奇数、奇数、奇数、・・・・・ユーちゃんの音を聴き、動きを食い入るように見る。気付いてくれ、私は樹海を遭難中だぜEE:AEB30
その時、おもむろにユーちゃんは顔を上げてこちらを見た。ただ見たのではない。意思のある顔だ。「行け」。奇数。
こうして事なきを得た。こんな窮地に陥っていたことに誰が気付いただろうか。
メンバー間のアイコンタクトの重要さを思い知った。
私はあまりの感動に、その後の歌の記憶がない(笑)
POPROCKは終わっても、ポコッペリンは終わらない。
次なる舞台でお会いしましょう。