ひとまず状態は落ち着いているが、覚悟はしなくてはいけない。エルは癌だ。そう遠くない将来、お別れしなくてはならないだろう。また胸を掻きむしるような苦しみを味わわなくてはならない。
死ぬことなんて考えてなかった。
どの子を迎える時も、別れる事なんて考えなかった。正直私は後悔している。こんなに苦しい思いをしなきゃならないなら、一緒に暮らさなければ良かったと。
それでも、少なくとも自分の手で保護したエルと大五郎に関しては、放っておけば死ぬ状況だったのだ。他に選択肢はなかった。これは抱き合わせの運命だったのだ。こうなるしかなかったのである。
一緒に暮らした日々は、本当にかけがえのない素晴らしい日々だった。それでもこんなに辛い思いをするならなくても良かった。絶対に失わなくちゃならない「かけがえのない日々」に、何の意味があるのか。
どうしてこんなに苦しまなくちゃいけないのか?
「幸せな時間があっただけいい」。一緒に暮らさなければ、なかった日々だ。
それでもそれは必ず失われるもの。彼らは「死」という最悪な形で私を置いていく。
幸せだった日々なんかに、何の意味があるのか。いっそ全て忘れてしまった方がどんなに楽だろう。
全て忘れてしまえたら。
私は楽になるだろう。
ラッキーとミュウとの別れ。彼らとの日々。
胸を締め付けられるような思いは、もうしなくていい。
なくてもいい出会いだったのか。自分に問う。
ラッキーと、ミュウの、最期のとき。
彼らは身をもって教えてくれた。死と言うこと、生きると言うこと。
彼らを見送って、私の死生観は変わった。
彼らとの出会いは、それを私に教えるためだったのかもしれない。
戻れない思い出は辛いけど、この気付きはなくしてはいけないものだ。
エルもまた、命と引き換えに私に何かを残していくだろう。私はそれを受け取らなくてはいけない。
そしてそれは、私の人生を豊かにするはずだ。
猫との出会いは、神様から私へのプレゼントだったのだろうか。