*下書き保留していたものを、少しずつアップしようと思います。
吐き気止めは効かない。
エルはまた食べなくなり、すっかりしょんぼりしてしまった。
ダルそうに眠り続けている。
迷ったが、食欲増進剤を飲ませることにした。もうダメならこの薬も効かないだろう。
そうなったら、看取りの覚悟だ。
しばらくすると、2階でエルを看ていたダンナがエルを連れて下りてくる。
「ちょっと興奮してるから連れて来た。」
エルはワーワーと鳴きながら、あちこち歩き回り始める。
そして大五郎の餌場に飛び乗り、大五郎の食べ残したカリカリを食べ始めたので驚いた。
まだこんな力があったの!?カリカリなんて、もう長いこと食べていないし。
どうやら何でも食べそうなので、もう食べなくなっていたレトルトを出した。食べる食べる。逆に、魚のほぐし身は食べなくなってしまった。
それでも凄い食欲だ。食べても食べても動き回ってねだりに来る。
異常だ。
薬の力で食べさせられているのである。
悩ましいが、栄養は摂れた。栄養が摂れたので、目に見えて元気になった。興奮も数時間で落ち着き始め、6時間ほどでやっと横になった。
そろそろ一日経つが、食欲はまだしっかりある。出せば普通に食べるが、自分からはもうねだらなくなった。こうして効果は薄れていくのだろう。その先はまた、食べずにグッタリなのだろうか。
薬はまだ1回分ある。追加するなら電話1本で買うこともできる。
最初の数時間の興奮が可哀相だが、そこさえやり過ごせば当面この食欲増進剤で命を繋ぐことが出来そうではある。
しかし。
もう本来なくなっているはずの食欲。エル自身が食べようとしていないところに、薬の力、人間の力で強制的に食べさせるのである。
無理な延命はしないと決めていたが、無理とは?そもそも延命自体が無理をさせているのではないか。
そして、エルはガンなのだ。長生きすれば、それだけガンは成長する。転移のリスクも上がっていく。
食べなくなると辛そうではあるが、肺に転移すればもっと辛い思いをさせることになるだろう。
腫瘍は今、モーズ軟膏の効果でとても小さくなり、浸出液もほとんどない状態だ。
今のうちに送り出してやるのが、エルのためなのではないか。
いずれは向かい合わなくてはならないのである。先延ばしにすればそれだけ、ガンは成長する。エルを苦しめるのである。
執着しているのは私だ。
私の執着が、エルを苦しめているのだ。
答えは出ている。
それなのに、往生際が悪い。
エルは今、とても安らかに眠っている。とてもガンを患っているようには見えない。
それが私を迷わせる。
食欲増進剤を使えば、しばらくこの幸せの中に居られるのである・・・・・・・。
