人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

エル、乳腺腫瘍<7>

その後、嬉しいことに脇の腫瘍はどんどん良くなっていったのだ。

もちろん治ることのない、悪性腫瘍だ。しかし浸出液は日に日に減り、異臭もなくなった。かさぶたが剥がれると、見た目にも「できもの」がなくなったようになったのだ。逆にえぐれているぐらいだ。

抗生剤を飲まないことが悩みの種ではあったが、食欲はあり、キッチンカウンターまでジャンプするなど病気ながら元気だ。

 

そして、5回目のモーズ軟膏。

エルの脇を見て先生は、「あ、小さくなってる」と言った。

モーズ軟膏にはあまり乗り気ではなかった先生も、今回は笑顔ですんなり受けてくれたのだ。

気分がいい。

しばらくは、安泰だろう。

 

ところが迎えに行き、診察室に通されると、そこには恐ろしい画像があった。

モーズ軟膏の処置後の患部の画像だったが、恐ろしいのは患部ではない。その隣にくっついている新たな腫瘍である。

「大きくなってきまして・・・。」

前回見つかったものだ。恐らくリンパに転移した、と言う。

何も言葉が出てこなかった。せっかく治療の効果が出てしばらくは平和に過ごせると思っていたのに。

「これじゃ、きりがないですよね・・・・・・。」とやっと返すと、「そうですね。治療の方向性を変えて、腫瘍がまた大きくなった時にモーズ軟膏で叩くようにするとか。」

最初に「腫瘍を小さくするのか」「自壊の処置とするのか」と、目的は二通りあると聞いてはいた。前者から後者にしようということだ。

確かに、この二つの腫瘍を同時に毎週叩いていくなど、現実的ではない。というか、敵のスピードの方が速いのである。もう後手に回るしかないのだ。先生の言った通りであった。

それでも先生は、「モーズ軟膏も無駄じゃありません。自壊して手に負えなくなったら、これで処置していきましょう。」と言ってくれた。

自壊待ちだ。

 

この後どうなっていくのか。

腫瘍はどんどん大きくなる。そして肺に「飛ぶ」、先生はそう言った。

そうか。もしかしたら腫瘍自体は致命傷にはならないのか。それが肺に転移すると、肺の機能が侵蝕されていき、それが決定打となるのかもしれない。

 

かもしれない。

それに留めておく。

知っても仕方がないことだ。どうにもできないのである。

今、まだエルは元気だ。病院から戻ると、ご飯をもりもり食べた。

「抗生剤を飲めなくてこの状態とは、良いですよ。」と言ってもらった。

エルは頑張っている。

死神と戦うように、頑張って、頑張って、ご飯を食べて良く眠っている。

根拠もなく「余命は半年ぐらいじゃないか」と言ったが、たぶんそんなにない。

それでも、病気に対してはまだ負けていない。私にはそう思える。

 

まだ、先のことは考えない。

今を精一杯、見つめていたい。