怖くて患部は見られないままだが、エルの脇からは異臭がにおい始めていた。膿んできたのだろう。
ネットの情報を参考にして、服の内側にガーゼを当てることにした。
4回目のモーズ軟膏へ。
いつも診て貰っている先生が処置し、お迎えでは話をする時間を作ってくれた。
表情は冴えない。
先生は、モーズ軟膏にあまり積極的な考えではないように見える。
「あの、良かれと思ってモーズ軟膏をやっているつもりですが、実際どうなんでしょうか?今後の見通しとか・・・。」先生の本心を聞きたかった。
乳腺腫瘍は進行が早いので、あまり効果は望めない。言いにくそうに、しかしはっきりとそう言った。
良性腫瘍でなどもう少しタチのいいものであれば腫瘍を小さくすることもできるが、この腫瘍だと進行の方が早く、効果が追い付かないだろうと。
そして、現状膿が出ているのでは、自壊しているのと変わらない。モーズ軟膏をやってもやらなくても、いずれ肺に転移するという経過は変えられない(転移確定かよ!?)。
モーズ軟膏を止めて自宅で処置していくなら、その方向でまた考えていきますよ。
私は混乱した。
私なりにネットで色々調べたが、治らない前提でもいい話しか見つけられなかったのである。そして臨時でエルを診てくれた先生との話の違い。「やってみる価値はあります。」と言ってくれたのだ。思惑通りにならない可能性もある、との前置きはあったが。
モーズ軟膏の効果は、腫瘍を小さくする以外に「自壊にまつわる苦痛・苦労」の軽減もある。その部分だけでも無駄だとは思えない。実際臨時の先生も、「小さくならなかったら、自壊の処置として回数を減らす方に転換する方法もある」と言った。
担当の先生も、モーズ軟膏のメリットは良く分かっている。それなのに消極的な理由は何なのか。もしかして治療がエルに苦痛を与えているのだろうか。それは私も望まない。メリットよりも苦痛が上回るなら、考え直さなくてはならない。
しかし先生曰く、腫瘍自体は壊死しているので治療に痛みはない、と。「ただ、ストレスはありますよね。」とだけ言った。
答えが出ないまま、家に帰る。
エルは疲労困憊という感じで、動かない。水をあげるとそれをガブ飲みし、全部吐いた。そのまましょんぼりと動かなくなってしまった。ご飯も食べない。
やっと前回の嘔吐、食欲低下から回復したところだったのに、また戻ってしまったのか。
抗生剤も出たのだ。これまで薬はご飯に混ぜていたので、ご飯を食べないと言うことは薬も飲めないということである。
今後もモーズ軟膏の度にこうなるのだろうか。結構なダメージだ。やはり、治療のメリットとエルのダメージと、秤にかけなくてはならないだろう。
「もう今日は薬は諦めよう。とにかくまず一度、元気になって貰わないと・・・。」ダンナが言った。
暴走しがちな私にブレーキを掛けるのはダンナだ。薬、食事に固執し過ぎるのは私の悪い癖である。
大らかにならなくては。
突破口は、シューマイだった。
長いので、つづく
*100均のイスの足カバーの先を切って、服にくっつけてみた。
