11月などまだまだ先のことだと思っていたが、時は着実に流れていた。ちゃんと、その日は来た。
娘ぶー子のパートナー・べったまが、去って行った。
我が家から見えるほど近くに二人で住み、約8年。誰もがこの生活がずっと続くと思っていた。思って疑わなかった。
「結婚」という形を取れない事情があったが、家族として彼女らも、私達も、形成されていたのだ。誰にとっても辛い別れであった。
仲違いとか、心変わりとかが原因ではない。二人の気持ちは変わらぬまま、二人は別れを選んだのだ。
それでも一緒に住み続けていたのは、単に家を出るあてもお金もないというだけはなく、どこかで本当の別れを先延ばししたい気持ちがあったのではないかと思う。
とは言え別れの決意は固く、「別れる相手と暮らす」という辛さも一時期はあった。
そこから逃れるように交友関係を密にしたぶー子に、やがて新しいパートナーができたのである。
1年以上前の話だ。
そう、ずっとべったまは一緒にいたのである。
奇妙な関係だ。理解しがたいものがあるかもしれないが、ぶー子とべったまの関係は、愛憎を超えてもはや家族となっていた。べったまは新しいパートナーを受け入れ、まるで新しい家族が増えたような形となった。
また新しいパートナーもべったまと良く似て、あるがままを受け入れてくれる人だった。
こうして不思議なバランスを保ったまま、時は流れていた。
ところがぶー子が妊娠した。
もうこのままでいる訳にはいかない。
11月。
べったまが出ていくまでの、期限を切った。
まだまだ先だと思っていたのは、現実を見たくなかったからだ。私にとっても別れは辛い。彼女らには紆余曲折があったかもしれないが、私にそれはない。私の家族でもあったのだ。去っていくことなど、考えたくなかった。
あいさつなんかしないでいいから、静かに去ってくれと伝えた。
いつものように会い、いつものように別れ、いつまでもそこに住んでるように錯覚し、いつの間に新しいパートナーに慣れている、そうやってやりすごすつもりだった。
実際には引っ越し当日にべったまの家族が挨拶に現れ、結局去っていくべったまを見送ることになってしまった。
完全な、別れを見た。
べったまは、去った。
「月に1回はこっちに来るって言ってるしさ!」ぶー子は自分を励ますように言った。
我が家の犬ミッツは、うちとぶー子達と協力し合って世話をするという前提で引き取ったのだ。定期的に来てくれそうである。
「べったまが泊まれるように、ベッドを入れるから!」と、ぶー子。
べったまは、ずっと家族だ。
ついでに言おう。
べったまのご両親も、また会おうと言ってくれている(笑)
私はこのような関係に、尊さを感じずにはいられない。
別れることはないんだ。
ずっと家族だよ。
べったま。