人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

生き残る判断 生き残れない行動 / アマンダ・リプリー

ハードカバーで380ページ、ずっしり重い一冊だったが、夢中になって読み切った。

単なる災害時ハウツー本ではない。

心理学的行動学的に、ひとつひとつ解明していくのだ。

人間は生死にかかわる危機的状況に陥った時、どのような状態になるのか。

生き残るのは、簡単なことではないぞ!

 

もはやこれは「研究」と言っていい。徹底的な取材、検証。

テロ、ハリケーン、飛行機事故、火災。災害から生き残ったのは単なる偶然ではない。そこには人間の本能があり、習性がある。それは一体どのようなものなのか。証言から浮かび上がってくるのだ。

生の声はそれだけで壮絶なものだが、そこで起こっていたできごと、心の動きも驚きの連続である。

ともすれば難解になりがちなこういった検証も、事例をそのまま交えることによってドラマになる。そのドラマから、いつの間に学習している感じだ。

最後の章は「英雄的行為」。

壊滅的な危機の中、「英雄」は現れる。それは名誉のためではなく、生存戦略のひとつではないかと結論付けたことに、私は感動すら覚えた。

最後にはそう自然に思えるほど、この本によって私達はたくさんのことを学ぶことができるだろう。

 

「面白かった」という言葉はそぐわないかも知れないが、貪るように読み進んだ。

大変に興味深い一冊であった。

ただ、ちょっと翻訳がド直訳で伝わりにくい。できれば一度頭の中で咀嚼して、訳者の言葉で書いてもらいたかった。

原文に忠実であることも大事だと思うが、読みにくさはあった。

 

 

ぽ子のオススメ度 ★★★★★

「生き残る判断 生き残れない行動」 アマンダ・リプリー

光文社・ちくま文庫