ハードカバーで380ページ、ずっしり重い一冊だったが、夢中になって読み切った。
単なる災害時ハウツー本ではない。
心理学的行動学的に、ひとつひとつ解明していくのだ。
人間は生死にかかわる危機的状況に陥った時、どのような状態になるのか。
生き残るのは、簡単なことではないぞ!
もはやこれは「研究」と言っていい。徹底的な取材、検証。
テロ、ハリケーン、飛行機事故、火災。災害から生き残ったのは単なる偶然ではない。そこには人間の本能があり、習性がある。それは一体どのようなものなのか。証言から浮かび上がってくるのだ。
生の声はそれだけで壮絶なものだが、そこで起こっていたできごと、心の動きも驚きの連続である。
ともすれば難解になりがちなこういった検証も、事例をそのまま交えることによってドラマになる。そのドラマから、いつの間に学習している感じだ。
最後の章は「英雄的行為」。
壊滅的な危機の中、「英雄」は現れる。それは名誉のためではなく、生存戦略のひとつではないかと結論付けたことに、私は感動すら覚えた。
最後にはそう自然に思えるほど、この本によって私達はたくさんのことを学ぶことができるだろう。
「面白かった」という言葉はそぐわないかも知れないが、貪るように読み進んだ。
大変に興味深い一冊であった。
ただ、ちょっと翻訳がド直訳で伝わりにくい。できれば一度頭の中で咀嚼して、訳者の言葉で書いてもらいたかった。
原文に忠実であることも大事だと思うが、読みにくさはあった。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「生き残る判断 生き残れない行動」 アマンダ・リプリー
光文社・ちくま文庫
