人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

父に似た人

金曜日。

あっと言う間の一週間だったが、「やっと」という思いでもあった。

色々問題を抱えた父と会い、気の重いまま私はダンナとの待ち合わせに向かっていた。

バス停までいつもギリギリで走っていたので、今度こそはと余裕を持って家を出る。

信号が変わるのを待っていると、向かいから年配の男性が、やはりバス停に向かっていくのが見えた。

 

・・・・・似てる。

どことなく父に似ていた。背格好、歩き方。

バス停に着くと、私は彼の横に並ぶことになった。他には誰もいない。

 

「清瀬行きか。」

遠くにバスが見えると、男性は言った。わざわざ声に出すあたりも、父と同じだ。それにしてもバスは結構遠いのに、行き先が見えることに驚いた。

どうやら彼も私と同じ「新秋津行き」を待っていたようで、清瀬行きは見送る。

新秋津行きはなかなか現れない。もう10分ほど遅れている。

「こないねぇ。」彼はつぶやいた。

「遅れてるんですかねぇ。」私が答える。

 

正直なところ、父に似た私はこの人が気になって仕方がなかった。きっかけがあれば、話しかけてみたいと思っていたところだ。

「さっきの行き先、良く見えましたね。」と言うと、「いやぁ、もう僕85ですからもうダメですよ。」と笑う。これもまた、父そっくり。

 

日大のね、人に会うんですよ。この仕事、うまく行ったらこれは凄いことですよ。

 

何やら「すごいプロジェクト」を進めているようで、どういったプロジェクトなのか、どういった会社なのかを話すのだが、固有名詞が多いうえ専門的で、さっぱり私には分からなかった。

ただこの人には自信があるようで、意気揚々と一方的に話し続けていた。こんなところも父と同じだ。

そう思うと切ない。父もこんな風に、他人に自分の話をするのだろうか。私はできるだけ気持ちの良い返事を返すようにする。どうか父の話も、優しい人に聞いて貰えますように。

 

彼の話しぶりから、周りと上手くいっていないことが感じられる。

自分の悪口を言う人。

別れた奥さん。

そしてそれを見下して悪く言うのも、父と同じだ。それでも、この人がいじらしく感じられる。

 

バスでも隣に座り、終点まで話をしていた。

父も4年前は、こんなに元気だっただろうか。もう本の出版には手を付けていただろう。そしてそれはまだ、完成していない。

 

新秋津で別れる。彼は「日大の人」のところへと向かっていった。

プロジェクトは完成するだろうか。

4年は長いようで短いですよ・・・。