先に寝るのはダンナだ。
外で飲んでも、家で飲んでも、ダンナは先に寝る。
残された私は飲み足らず、しぶとく飲み続ける。ボトルが空いてから、さてどうしよう、となるのもいつものことだ。寝とけよ。
空けかけのものがあればそれを飲むが、タイミングが悪いと何もない。
新しくボトルを開けるは何だかもったいないし、となって、ちょっとウンザリした気持ちでいつも思い出すもの。
果実酒だ。
自家製などと言うと聞こえはいいが、要は消費しきれなかった果物のなれの果てだ。無理矢理作ったので、愛着もない。そんなものが美味しい訳もなく、ますます忘れ果てるのである。思い出すのは、「もう他にない」というこんな時だけである。
飲まねばなくなりもしない。古いやつは、年単位で古いものだ。愛着もないのだから、とっとと終わらせてしまおう。
収納棚の奥から出したそれは、もはや何の果実酒かも分からない。色も微妙だ。果実酒という名からは程遠い、黒に近いような暗い色である。まったくそそらない。
そしてその味も、美味しくなかった。飲んでもそれが何なのか分からない。ただ甘い、甘く、軽くエグみがあり、変にフルーティ。
やっと私は決心した。何年もかけてこんなものを飲んでいるなんて、そしてこんなもので酔うなんて、全く無駄だ。もったいないというそれだけでここまで来てしまったが、もったいないという感覚は時に有害だ。文字通り、体に悪いかもしれん。得体のしれない酒。
やっと、捨てた。
しかし、これで終わりではない。私の夜は続く。
今度は床下収納を開けると、比較的新しい方の果実酒を取り出した。
これも消費しなくてはならないのかと思うと、気が重い。
飲んでみると、こっちはまだマシな味であった。マシではあったが、やはり正体は分からなかった。
梅酒なんかを作る、大きなガラス容器に2つだ。さすがに捨てる気にはならない。
今後は本気出してこれらを飲んでいくことにする。そしてもう果実酒なんかは作らん。
色々と手放していこうと思っている今日この頃。
果実酒も、もうおしまいにする。