定期検査に行って来た。検査もだが、前回のドックの結果を踏まえて、相談したいこともあった。
具体的には、高血圧と重度の歯石。
腫瘍の話は、言われるまでスルーすることにした。どう転がっても年齢的に治療ができないなら、検査で負担を掛けたくない。検査と言うか、レントゲンで大きさの変化を見ていきたいと言っていたのだ。しかし悪性の疑いが濃くなったところで、決定打は打てないのである。対処療法しかないなら、もうあまりエルに負担を掛けたくない。
こちらから言うまでもなく、先生の方から血圧の話があった。
ドックの数値が悪かったのは、検査によって興奮していた可能性も否めず、もう一度チャレンジしたいとのことだ。
こうして定期検査+血圧測定となった。
ところがやはり、どうにも血圧の数値が高いと。できるだけリラックスした環境で計りたいので、うちの車で計ることになった。しばらくは私が預かり、ふたりきりに。
これで数値は下がったそうな(笑)飼い主冥利に尽きるというのか、ちょっと嬉しい。
どうやら血圧に問題がないなら、心臓も心筋症ながらギリセーフのライン、今回の検査結果はほとんどが正常値内、体重も増えたという快挙だ。
「歯石取りをやるなら、状況としてはいいタイミングだと思います。」先生は言った。
いいとは言っても、エルはもう18歳である。検査を待っている間に散々調べたが、18歳で全身麻酔をかけて歯石を取ったという例は、ほとんどない。なくはないが、「知り合いで」とか「聞いた話」というレベルだ。それほど少なく、一般的には考えられないものであった。
何とか麻酔を使わずにチャチャッとできたりしないものかと聞いてみると、「歯石取り」と言っているが、実際には歯のレントゲン取り、歯茎の中がどうなっているのかを確かめて、必要なら抜歯ということになるらしい。歯石そのものよりも、問題なのはその影響がどこまで出ているかであった。歯のレントゲンを撮ること自体が難しく、麻酔が必要になるとのことだ。
もちろん高齢であることを踏まえて、普通とは違うアプローチで短時間に、最低限にすると言う。
それでも、それでも18歳だ。
「ちょっと・・・、さすがに怖いです。」と正直に言うと、「ですよね、僕も積極的にはおすすめできません。」先生は答えた。
もしこの重度の歯石が次の段階、つまり歯肉炎なり何なりになり、痛み、食べられなくったら、そうなった時にはエルはもっと歳をとっているし、その時の検査の結果はどうなっているかは分からないのだ。もしかしたらこれが最後のチャンスかもしれない。歯がボロボロになって、食べたいのに食べられなくなってやせ細って衰弱していくなんて、病気はこうしてコントロールできているのに歯が原因で命を落とすようなことになったら、私は後悔するんじゃないか。
しかし、もしこの麻酔が命取りになったら、それはそれで後悔する。自分の判断で殺したという思いが一生残るだろう。これは耐え難い。まだ歯の方が自然の摂理に則っているだけマシなのではないか。
ちょっと考えさせて欲しい、と言って逃げたが、もうほとんど気持ちは決まっていた。
幸い定期的にこうして診て貰っているのだ。変化があれば、すぐに最善の対処ができるはずだ。
流れに任せたい。