結局エルは、少しばかり「本気の大好物」を食べ、吐いた。
もうエルは、食べられないのだ。
新しく出すご飯には口をつけるが、食べても吐いてしまう。そして2度目はない。
トリガラのゆで汁を少しばかり飲んで、そしてやはり2度目はなく、水分もとれていない。
先立ったミュウやラッキーの時と、同じだ。これは、「終わりの始まり」なのか。
エルはもうすぐ18歳になる。人間なら88歳程度とのことだ。甲状腺機能亢進症にもなっている。辛いがエルに負担をかける延命は、考えていない。
判断を誤るといけないので、最後に一度は病院に行くつもりではあった。そしてそこで、自然に看取りたいと伝えるつもりだった。
そんな覚悟を決めはしたのだが、どうも、食べられない以外に調子が悪いように見えないのである。
そもそももう食べる以外は寝てばかりだったので、「元気がない」は普通の状態だ。
しかし、表情はいい。コロンとひっくり返って眠る。撫でれば喉を鳴らす。ご飯を持って行けば、目を輝かせて寄って来る。ただ、食べない。それだけなのである。
以前、謎に食べなくなったことがあった。その時と同じと言えば同じでもある。
しかしこのまま食べもしない、飲みもしないでは、現状が元気でもこれから弱ってくことになるだろう。元気なうちに病院にいくことにした。
病院ではやはり「表情はしっかりしてますね」と言われ、皮下点滴と吐き気止めの処置だけしてもらった。
これで良くならなかったら、検査と言うことになりそうだ。
ここが私の選択の時になるだろう。
ひと晩経ったが、今のところ変化は見られない。
ただ、変わらず表情は良く、いつものように過ごしてはいる。
延命しなかったミュウの余命は、ここからたったの一週間であった。
エルは、どこへ行こうとしているのか。
どうしても、まだそんなに悪い状態には思えない。思いたくない。