「レーズンバター、ポチッてもいいですかね・・・。」
遠慮がちにダンナが言った。
レーズンバターが大好きなのである。子供の頃、お義父さんがお酒のつまみに食べていたのを貰っていたようで、まぁあんなの、つまみと言えどおやつだ。砂糖バターなんて、とても罪な菓子である。
別にポチれば良かろうに、ダンナが弱気だったのは、それがちょっと高いものだったからである。SNSの広告で出てきたもので、数種類の詰め合わせになった、ちょっとした高級菓子となっていた。
別に私は痛くも痒くもない。何なら家飲みへといざなう天使。半分は私が食べますし。
こうして翌日には「レーズンバター、ポチっちゃった💗」と、嬉しそうなLINEが来たのであった。
「あ!来るよ!」
それは数日後、ラーメンを食べている時だった。
「レーズンバター、『持ち出し』になった!もうすぐ来る!」
レーズンバター、追跡してたのか。どんだけ焦がれてるんだって。
「良かったね、楽しみだね。」
ではなかった。
「今来ちゃったらどうしよう!!」
別に再配達してもらえばいいだけだと思うが。
ラーメンを食べ終わり、自転車で家に向かっていると、家の近くにヤマトのトラックが停まっていた。
「ああっ!!もしかして!!」ダンナは自転車のスピードを上げ、私を置いてサッサと帰ってしまった。
ところが件の配送屋は、なかなか現れない。
「違ったのかなぁ・・・。じゃ、トイレ行ってくるよ。」と言ったところで、インターフォンが鳴った。
いつもなら私が応対するところだが、ダンナがサッと出て行った。トイレどうした。
「・・・・・・・小せぇ。」
ダンナは縦10センチ横15センチほどの小箱を持って戻って来た。
小さくて高い、ということは、それだけモノがいいという考え方もあるじゃないか。調べてみたら、ひとりで生産から発送まで全てやっているこだわりのレーズンバターとのことだ。月に一度しか販売しないようである。
さて、明日は祝日だ。
頂き物のワインもあるし、こうなると明日の過ごし方はもう決まった。
あとは繁忙期のダンナが出勤にならないことを祈るばかりである。