ここ数年、もうずっと友人であり音楽仲間でもあるユーちゃんに髪を切ってもらっている。
彼は理容師さんなのだった。
床屋、というのは基本的には男性が行くイメージだが、彼のところには女性のお客さんも多い。
腕前、人柄、心意気、そんなものが揃うと、性別のボーダーなど関係なくなるのだろう。
頭、というものは、案外秘密を秘めているものだ。
薄いだ白いだ、もしかしたら自分でも気がつかないところにハゲがあったりデキモノがあったりするかもしれない。それをさらけ出すには、ちょっと勇気がいる。
しかし医者が尻や下着に動じないのと同じで、そんなものにはもはや無関心でいてくれるだろう。
始めのうちはそう言い聞かせていたが、もう慣れてしまった。家族のようなものだ。こうなると、他の部分の恥じらいも減ってくるから、気を付けなくてはならない。
髪を切るにあたって洗髪は必須である。
程良い指の力にはマッサージ効果もあり、特にガチガチに固まった染髪料を流すときなどとても気持ちがいい。
得てしてこうした理容関係の洗髪は自宅のそれより丁寧なものだが、良し悪しであった。
「髪が抜けるから、そんなに頑張らなくていいです!!」
年々減っていく毛量である。女とて、それは恐ろしい。
しかし彼はこう言って、手を緩めなかった。
「こんな程度で抜ける髪なんざ、もともと抜ける髪だぜ!!」
目からウロコだったのだ。
抜けることを恐れてこわごわ頭を洗ったって、結果が同じなら気持ち良くスカッといけ!
この考えは、色んなことに共通していることに、後に何度も気づかされる。
「こんな程度のことなら、もともとこうなるもんなんだよ」という、考えは、せせこましい神経を大らかにした。
どうせこんなものなら、それを受け入れていこうじゃないか。
失敗にクヨクヨしない。
そもそも失敗なんかじゃないのだ。もともとそんなもんなんだぜ!!
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