今週のお題「夏といえば、この作品だ!」
夏。
縁側で食べるスイカ。
蚊取り線香に朝顔。
寝っ転がって扇風機に当たりつつまどろむ。
なぜか夏と言って浮かぶ風景は、昭和の懐かしい時代である。
歳を取ったのか、ワクワクするような季節というよりも、失った季節になってしまった。お盆の行事などやってみたせいか。
そんな思いが重なる作品が、「異人たちとの夏」だ。
妻と別れ、一人暮らしていた主人公の原田は、昔住んでいた浅草で死んだ両親と出会う。
変わらぬ両親は、40歳の原田を子供のように扱うのだ。あの頃のまま。
原田は、昔住んでいたこの家に通うようになる。
家も、両親も、あの頃のまま。
夏。
昭和の、いい時代だ。
私が過ごした子供時代よりももっと古いが、それでもどこか懐かしくなる。
失われた風景。
失われた思い出。
それが取り戻せるなら、戻ってしまいたくもなる。
作品としては、いささか古臭くなってしまった部分も多い。
それでも、異人たちとの夏は郷愁を呼び起こし、私をも誘う。
昔過ごした家に、行きたくなった。