そろそろ行かねば、と思いながらもダラダラ日にちだけが過ぎていた。
ミッツの予防接種。
狂犬病のワクチンのお知らせが市から来ていたが、犬飼い2年生、ワクチンって色々あったような気がし、もう訳が分からなくなっていた。つまり、面倒臭かったのである。
とは言え、ぶっちゃけ狂犬病なんかよりもフィラリアの予防の方が気がかりであった。とにかく何でもいいから、このこんがらかったワクチン問題をほぐしてもらいに病院に行ったのである。
結論から言うと、フィラリア予防のワクチンはもう終わっていた。調べてみたら、去年はミッツを引き取る前に、向こうで済ませていたのだ。
残るは狂犬病と混合ワクチン。
両方同時にはできないので、混合を先に接種することになった。
基本的には、6種混合とのこと。
キャンプやハイキングなどアウトドアが多いようなら、ノミダニ蚊??あたりの虫由来の病気も予防する8種もありますと説明があった。それならそっちの方がいい。どんどんアウトドアに連れ出したいと思っていたところだ。
フィラリアの方は、注射は終わりましたが薬はあるとのこと。じゃあそれでいいじゃん、それを。
月に1回、虫のシーズンの間に服用。8ヶ月分だと少し安くなるというので、それをお願いした。
フィラリアの経過を知るために、簡易検査。完全に石灰化していれば終了とのことだが、まだ少し陽性反応あり。
ワクチン、大人しく終了。
会計を待った。
「37474円です。」
「・・・は?」
耳を疑う、というのは比喩ではなく、リアルに起こるんだなと知る。3万7千円?
今日何やったっけ?と思い返す。何がそんなに高いんだ?6種のワクチンを8種にしたからか?
受付のスタッフは、私がグズグズしているので怪訝な顔をしている。
手持ちはPayPayの1万5千円と、財布の1万円。まさかこれで足りなくなるなんて、考えもしなかった。こんなに高額だったことは、入院した時ぐらいである。
「あの・・・、足りないので取りに帰ります。」
メチャクチャ恥ずかしかった。しかし3万7千と言われて、普通はサッと出るものなのだろうか。
色々思うことがあり、車の中で私は混乱していた。そして深く後悔していた。なぜひとつひとつの値段を聞かなかったのか。
これまでこんなに高額だったことがなかったので、全く油断していたのである。
念のため、先生は全く押し付けるようなことも勧めるようなこともしなかった。「こんなものもありますよ」と、念のため、教えてくれた程度であった。私が勝手にホイホイ食いついただけだ。
く~~~、3万7千か。これだけあったら、何ができる??
大概のことは諦めをつけてとっとと忘れるようにできるが、今回だけはそれがなかなかできなかった。つい先日、ダンナに臨時収入があって喜んでいたところだったが、これに半分持っていかれてしまうのか。3万7千円。3万7千円。3万7千円・・・・・。
さしあたって現金が必要だったので、埋蔵金から出した。生活費の残りをコツコツ貯めたものである。コツコツ(泣)これを持って病院に行って、支払いを済ませる。
車の中で明細を見ると、高額になっていたのはフィラリアの薬であることが分かった。27879円。
箱に入った薬を支払い時に受け取ったが、・・・・・・これ、返せば2万7千円が返って来るんじゃないか??
3万7千円の請求に愕然とし、手持ちが足りずに家に帰り、支払って明細を見たらすぐさま返品だ。とてつもなく恥ずかしい。絵に描いたようなケチである。
しかし実際問題、2万7千円を気前良く払えるような状況にない。
恥を忍んで返品を申し出れば、この出費は免れるのだ。必要なのは、私が恥を忍ぶことだけである。私のプライドに、2万7千円の価値があるのか。
受付に戻って返品したいと言うと、受付嬢はあからさまに戸惑った顔をした。ちょっと考え込んでから、「お待ちください」と言って奥に消えた。
しばらく待った後に、「本当はこれは薬なので返品はできないんですが」と言って、返品の手続きをしてくれたのだ。
手元に戻った2万7千円は、心なしかずっしりと重く感じる。
恥なんか知るか。戻ってきて良かった。
1週間後に今度はエルの具合が悪くて、また病院に行くことになってしまった。
念のため埋蔵金からあらかじめ3万を抜き出して挑んだが、今回は2563円であった。
怒り狂って暴れるエルに処置をしてくれたのだ。技術料では2万7千円の方に近そうなのに。