人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

卒業を控えた冬に

若い頃には、ろくな思い出がない。

思い出してもろくなことがないのに思い出してしまうのは、まだ消化できていないからかもしれない。

大人が嫌いだった。

「どうせ私なんか」とやさぐれ、突っ張れば愛されず、ますますやさぐれる悪循環。

そんな中でたったひとり、心に残る先生がいた。

その時私は、小学6年生だった。

卒業を間近に控えた冬、朝の集会では次年度のためにクラブ活動の紹介がされるようになった。

紹介するのは、部長は副部長を務める6年生。

私は人数の少ない地味なクラブに所属していたため、部長か副部長になっていたのだ。

そのためある朝、集会で部活の紹介をすることになったのだが、遅刻をして穴を開けた。

この当時の遅刻は反抗心などからの故意の遅刻ではなく、朝起きれないために毎日遅刻していたのである。

学校に着いた時にはすでに集会は始まっていて、まずいと思いつつもその中に入って行く勇気がなかった。

どこかに潜んで集会が終わるのを待ち、いつものように遅刻をして教室に入った。集会がどうなったかは分からない。

休み時間に、顧問の先生に呼び出される。

顧問は違う学年の担当で、部活以外で接点のない先生だった。

「おばさん」という感じの女の先生だったが、もしかしたら実際は、当時の印象よりも若かったかもしれない。

当然、怒られた。

しかし、こんなことはしょっちゅうだったのだ。自分でもウンザリしていた。

ハイハイと聞いて、時間が流れるのを待つ。

ハイハイハイハイ。ごめんなさいすみませんごめんなさいもうしません。

こんな感じだったので、何を言われたのかは全く思い出せない。

が、その後の展開は、今も強く残ることになる。

先生は突然私の両腕をガッと掴み、「先生は、あなたがこんなまま卒業するんじゃイヤだよ!」と迫ったのである。

銃で胸を射抜かれたようなショックが走った。

なぜだか分からない。

その直前まで「めんどくせえ早く終われ」と思っていたのに、我慢できずに涙がこぼれた。

自分でも、分からない。

分からないけど、なぜか涙が止まらなくなった。

きっと先生の本気が伝わったのだろうと、今なら思う。

本気で自分を思ってくれるということに対する、涙だったのだろう。

私はこの後、ショックで自分の教室に戻ることができず、理科室あたりでボーッとしていた。

やがてクラスメートが担任の指示で探しに現れ御用となったが、担任はチラリと私の顔を見ただけだった。

今井先生。

たったひとりの、信頼できる大人だった。

中学に入り、私はまたやさぐれる。