父とケンカをした。
十数年も絶縁していたのである、急接近などして、いつかこうなるんじゃないかと思ってはいた。
些細なことだ。考え方の相違。言い合っているうちにお互いに熱くなってしまった。
父は自分の言い分が正しいと思っている。
私も、自分の言い分が正しいと思っている。
こういう時は相手を理解しようと努力するべきだと思うのだが、父にはそれができない。
声を荒げ、覆い被すように人の話を遮るので、我慢できなくなってしまったのだ。
私が間違っていた。
私は「ハイハイ」と逆らわずに聞いていれば良かったのである。
間違っていようが不愉快であろうが、波風立てないのがお互いのためだったのだ。結局一番不愉快な結果になってしまった。
父が今さら変われるとは思えない。つまり、何を言っても無駄ということだ。
無駄なだけでなく、父を激昂させ、理不尽な言いがかりをまくし立てられる。そうなるとこっちも黙っていられず言い返してしまう。こうなったら泥沼だ。
こんなんなら、ハイハイ聞いている方がよっぽど良かった。
その後もずっと腹立ちは収まらないし、ちょっと可愛いヤツめ、ぐらいに思っていたのにもう憎たらしくて仕方ない。
兄と交代でしていた生存確認の電話も、やめた。
私は悪くない。こっちからかける気なんか、全く起こらなかった。甘やかしてたまるか。
しかし、父から電話を掛けてくることがないのも、分かっていた。そういう人なのである、父も、私も。だから十数年もこじれたのである。
折れてやることにした。
10日ほど経った頃、シレッと電話してみたのだ。
「もしも~~~し、ぽ・子でぇすEE:AE595」
いつもの調子でかけてみると父は、「おお、おお、ぽ子か」ととても嬉しそうである。
お互いにこれまでになかった展開に、どこかくすぐったい。
「オレな、この間ぽ子に怒られてな色々考えてな、オレちょっと怒りすぎちゃったかな、とかさ、・・・・・。」しどろもどろに言う父に、昔の面影はない。
「もういいよ、楽しい話をたくさんしようよ。」
父の話に逆らわない。そう決めた。
諦めではなく、父への想いだ。
週一度から3回に増えた、長電話の再開である。