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本当に謎なのだが、ダンナが突然電気サックスが欲しいと言い出したのだ。
まぁ私も発作的に新しいことをやりたくなることはあるので、「なぜ急にサックス?」という部分を聞くのを忘れていた。なので、訳も分からぬまま、楽器屋へと赴いたのであった。
私もダンナも、電気サックスのことなどさっぱり分からない。まずはスタッフさんから商品について説明してもらうところからだ。
それによるとこの手の物は大きく2種類あり、色んな音が出るいわゆる「電気笛」と、サックスの音色に特化したサックスの模造品「デジタルサックス」と。まずはどっちが欲しいのかはっきりさせるところからだ。
「サックスがいい。他に余計なものはいらない。」
つまりダンナはサックスが吹きたいのである。改めて衝撃を受ける。サックス。なぜか「電気サックス」と言っているうちは「あり得る」と思ったものも、「サックス」となった途端に格が上がるのだ。電気と言えど、サックスであることに気づく。
ところでなぜ本物ではなくデジタルにしたのかは、恐らく音量的な事情と値段と手軽さではないかと思われる。私も隣で初心者のサックスを爆音で毎日聞かされるのは、正直気が重い(笑)
デジタルサックスは1種類しか置いていなかったので、選択の余地はなかった。しかし現在、半導体の生産が追い付いていないとのことで、納品は春から夏頃とのことだ。
安い買い物でもないし、とりあえず「ちょっと考えます」と言ってお店を後にしたのであった。
その足で、近くの飲み屋へ。話題は自然と、さっき見たデジタルサックスのことになる。
「納品、春から夏かぁ。」
「どうせ買うんなら、またわざわざ来るより今注文しちゃった方がいいんじゃない?」
「音色も良かったし、悪い要素はないよね。」
酔いがいかほど手伝ったのかは分からない。店を出る頃には、注文して帰ることに決まっていた。
しかも、
「私も欲しいなぁ。」
「えっ!?」
これは明らかに酔いが手伝っている(笑)しかし私も欲しくなってしまったのだ。
「じゃあさ、電子トランペットが2千円ぐらいで売ってたから、まずはあれにしなよ。」
自分は高いデジタルサックスを衝動買いしようというのに、妻にはおもちゃのトランペットである。
しかし冷静に考えてみれば、おもちゃと言えどトランペットがそう簡単に吹けるとは思えない。まずはこれでやれるところまでやってみてから「デジタルトランペット」的なものを、あわよくば本物でもねだればいいかもしれない。
サックスの注文のついでに、2千円のトランペットを買うことにする。
先程担当してくれたスタッフを呼んでもらうと、真っ赤な顔で戻った私達が注文に来たので驚いていた。
必要な書類に記入を終えると、「今度はあれの音を聞きたいんですが」とダンナがトランペットを指した。
ところでトランペットは2千円ではなく、2万円であった(笑)
その上それは電子楽器ではなく、単なるプラスティック製だという。
「音量調節ができれば、家で気軽に練習できると思ったんですよね・・・。」ガッカリして言うと、「大丈夫です、音を小さくするものがあります。ヘッドフォンも繋げるので、元の音もちゃんと聴けますよ。」などと言うではないか。ミュートもろとも、視聴させてもらうことに。
いや~、これは、デジタルサックス以上の驚きであった。プラスティックなどと言うとまるでおもちゃのような響きだが、私には本物との聞き分けがつかなかった。
パオ~ンというトランペットの雄々しい響きが、聴くものの体に伝わってくる。
「ほ」
「欲しい・・・・・・・。」
全部セットにすると5万円程度にもなるとのことで、さすがに衝動で買うにはためらわれた。
結局買わずに帰ってきたが、もしデジタルサックスの納品まで気が変わらなかったら、改めてお願いしようと思う。
「・・・金管楽器は独学だと難しいので、最初だけでも習った方がいいと思います・・・。」
スタッフが控えめに言った言葉が気になるが(笑)