何しろビートルズに時間がかかってしまったので、どのような経緯でこの本がここにあるのか忘れてしまった。以前読んだ作品が良かったから、その延長線だったか。
田口ランディ。
この本では、生と死について、彼女なりの答えを出している。
生と死。
答えなどない、正解などないので、ある人が読めば深く共感しうるだろうが、その逆も然り。
私はたまたまタイミングが合ったので、非常に興味深く読むことができたが。
インドの奥地で高山病になり朦朧としているところで、たまたま手にした雑誌。そこには「死」について研究し続けたかのキューブラー・ロスの記事が載っていたのだ。
妙に気になり、そこからランディ氏のロスへの傾倒が始まる。
知れば知るほど、腑に落ちる事ばかりであった。
看取りの第一人者とも言われたロスについて調べているその時、まさに自分に「看取り」の時が来る。父親の余命宣告。
酒乱でモラハラ、毒親であった父親の最期とどう向かい合うのか。
ロスと、そしてそれはやがて訪れるであろう自らの死と、重なっていく。
私達の「逝く先」とは・・・。
それを「偶然」というのか「必然」というのか。
目に見えることしか信じないなら前者、いわゆる霊的・超次元的なことを肯定できるなら後者になろう。
ランディ氏、ロスはこの後者に当たり、偶然で済ませられることを必然として拾うのだ。ここに共感できるかどうかは人それぞれだろう。
果ては夢、そして「パピヨン(蝶)」にまで、意味を見出すのである。
人を選ぶ作品だと思うが、私もまたランディ氏のように、ロスの世界へと引き込まれてしまったひとりだ。
彼女は多くの人を看取り、死後の世界を確信していた。それは希望や願望ではなく、事実として。
私も母や猫達を見送り、今までになかったものを感じるようになった。それは決して霊的なものではなく、もっと感覚的なものだ。
思い過ごし、考えすぎ、と思えばその程度ではあるが、深く追求すれば、ロス風の解釈を付けることはいくらでもできるだろう。
その辺の自由度が、こういったスピリチュアルなものを胡散臭くしてしまう。
読み手によって、大きく評価が分かれる作品だろう。
エッセイのような軽い語り口なので、介護や看取りのあり方という観点から読むこともできる。
そういうものも含めれば、もっと広い人に読まれてもいい作品だと思う。
私は蝶を、探す。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「パピヨン」 田口ランディ
角川文庫