これはほんの三日前。
この尻が、このエルの尻が、まさかそんなに酷いことになっているとは知る由もなかった。
体、特に下半身を触ると「ギャッ」と言って怒る。どこか痛いようだ。
前にもあった症状である。加齢により、腰の骨が変形して痛んでいるという診断がすでに出ていた。
波があるようなので、様子を見ることにする。
しかし、昨日の朝のことだ。
「痛がる原因が分かった」。前の晩、一緒に寝たダンナが言ったのである。
原因?腰痛じゃないのか?
尻尾の下、お尻が酷くただれているという。
怖くて直視できなかったが、何やら酷い状態であることは遠目でも分かった。
病院へ連れて行く。
肛門嚢炎。
肛門の横にある肛門腺が炎症を起こしているとのこと。
派手に舐めまくったためか、「かなり重症」、周りの皮膚はすでに壊死しているという。
話を聞きながら、ぶっ倒れそうになった。
治療法としては、まず洗浄し、抗生剤を投与。
炎症が収まってくればそのうち皮膚が取れ、むき出しになった肉を新しく皮膚が覆えば完治、ということだ。倒れそう。
長い待ち時間と診察、洗浄でエルは疲労困憊である。しかもエリザベスカラーのサイズが合わず、午後の部にもう一度行く羽目になってしまった。
尻の壊死のショックと疲労で、グッタリ。
しかし問題はまだ残されていた。
午前中につけていたカラーは、長さが足らずに顔が患部に届き、舐めることができてしまったのだ。
午後に取り換えてもらったものは、もっと長い「ダックス用」。確かに長くて患部は守られるが、視野が狭いからか動きにくいからか、エルはすっかり戦意喪失して全く動かなくなってしまったのである。
これでは尻が治っても、飲まず食わずで弱ってしまう。
カラーをもっと快適にできないか。
実は家に、以前買った円盤型のドーナツカラーがあったのだ。しかしこれも長さが足りず、尻に顔が届いてしまっていた。
視界を取るなら、こっちの方がいい。
ならこれをもう少し大きくできないか。
単純に広げるだけだと、今度は動きにくくなってしまう。
直径を変えずに、大きくする。
試作。
立てて囲ってみた。
悪くない。
自由に動くようにはなったが、今度は「舐められそうで舐められない」というストレスが発生。
仕方がない、天秤にかけるなら、自由度が高い方がいいだろう。傷はこれからどんどん良くなっていくはずなのである。辛抱してくれ。
思い返してみれば、良くお尻を舐めるなぁと思ったことはあった。
なんであの時、気づいてあげられなかったのか。
ごめんね、エル。
本当に、ごめんなさい・・・・・。