11月の午前中って、こんなに明るく、暖かかったのか。
改めて調べてみると、娘ぶー子の愛猫クー太を家に預かったのは、もう2年ほど前になっていた。
やんちゃなクー太が兄貴分のビビ太にちょっかいを出し過ぎるというので、しばらく預かっていたのである。
その間は私の寝室にカンヅメであった。
気の毒だったが、他の部屋を知らないので本人は出たがりもせず、マイペースでバカンスを満喫していた。
マイペース。
クー太の性格を綺麗に言えば、その一言に尽きる。
飼い主であるぶー子も常々言っているが、脳のどこかに障害でもあるんじゃないかと思う程の間抜けぶりである。
障害物に疎く、ご飯に平気で足を突っ込んだり、ぶつかったりコケたりは日常茶飯事。
何なら踏んづけられてもビクともしないという鈍さである。我が寝室のベッドからも、普通に歩いて勝手に落っこちるのも見た。
しかし彼はそんなことには一向に気に留めず、至っておおらかに過ごしていたのだ。
ある日クー太は、カーテンレールの上を歩いていた。
カーテンレールの上だ。これが我が家の猫だったら「ちょっと見て見て!!」などと大騒ぎして写真にでも撮るところだが、もはやクー太がカーテンレールの上など、特段面白いものでもない。
7キロの巨体。
ニブいクー太が細いカーテンレールの上を、なんの躊躇もなくステステと歩いていた。
しかし、慎重さを持ち合わせない7キログラムは、簡単に落下した。
落下した7キロは、本能的にカーテンにしがみついた。
カーテンは7キロにしがみつかれて、音を立てて破れ落ちた。
私は呆気に取られていた。
クー太は驚くでもなく、ベッドで態勢を整えると「さて、次は何をしようか」とでも言うようにお構いなしにまた活動を始めた。
破れたレースのカーテンは垂れ下がり、一気に部屋の雰囲気を貧乏臭く変えてしまった。
こんなことがあったまま放置していたので、今日までカーテンを開けられなかったのである。
約2年間、寝室のカーテンは閉められたままだった。
まぁ寝る時ぐらいにしか入らない部屋である。それで不自由がなかったから2年も経ってしまったのだが、先日やっと新しいカーテンを買って、昨日やっとそれをつけたのである。
太陽の光には、不思議な力がある。
いつもより明るい部屋は、生気に溢れていた
「明」を知るための「暗」だったのか。
明るい部屋の輝かしさよ。
素敵な一日が始まりそうな気がしないでもないじゃないか・・・。