家で一人で飲んでいたのだ。
ダンナは先に切り上げ、私は飲みながら後片付けをしようというところであった。
ちょうどワインが空いたところだったので、サワーを作ることにする。今のブームは、安いパックの焼酎を炭酸と「とくとくレモン」で割るサワー。濃くしても飲みやすいので結構ヤバいやつ。
それを作り、流し台に置いて「とくとくレモン」を冷蔵庫にしまおうと思った時だ。その時私は「なんてこの『とくとくレモン』は素晴らしいんでしょう」などと考えていた。
そんな素晴らしいとくとくサワーを、ひとりしみしみ飲もうとしていた、まさにその時であった。
ガシャン。
えっEE:AEB2F
流しの中で、たった今作ったサワーが割れていた。いや、割れたのはグラスだ。グラスが割れた。
えー!?
皿やグラスのメーカーなどにこだわりはない、割れて困るものなどないと言っていいが、これだけはEE:AEAC6
シュピゲラウのダブルウォールグラスだ。文字にするだけでこの威力。
当の私かてシュピゲラウの何たるかなど分からんが、その高級そうな名前ではなく、その真の価値を、私は知っている。
6年前に遡る。
私が良く行くスーパーでは時々、千円の買い物で一枚もらえるシールを集めると、高級品が安く買えるというキャンペーンをやっていた。
それでも普段私が買うものの値段より高いので普段は見向きもしなかったのだが、その時のキャンペーンはシュピゲラウ、その中にダブルウォールのグラスをペアで900円というものがあったのである。
ダブルウォールというのは、中が空洞の二重構造になっているもので、これにより飲み物の温度は保たれ、またグラスは汗をかきにくいというものだ。
私は良く冷たいのも物を飲みながらパソコンを長時間いじるので、グラスの汗かきに悩まされていた。
それがこのダブルウォールで綺麗に解決したのである。
まず買ったのは、ボダムのダブルウォール。
フランフランで少し安く売っていたのでそれを使っていたが、これが華奢なヤツでホントにすぐ割れる。すぐ。
もしかしたらフランフラン製は安いので、その分クォリティも下がるのかもしれない。
いずれにしろあまりにもすぐに割れてしまうので、もう買い直すのをやめてしまったのだ。
そこでこのシュピゲラウだ。
今となってはもとの値段は分からないが、かなり安くなっていたので買うことにしたのである。こんな事でもなければ、買うことはなかろうグラスだ。これを「ご縁」と呼ぼう。
つまりこのグラスは、6年間割れずに頑張って来たということだ。
そしてそれがたった今、割れたということでもある。
呆気に取られて見ていた。なぜ割れた?
その瞬間を見ていないから想像になるが、置いた場所が悪かったのだろう。勝手に流しに落ちたのだから、流しギリギリに置いてしまったか、馬鹿。
人災である。
これまでのボダムでは、もう勝手に割れたと言わんばかりの割れっぷりであったが、これは自分の手で割ったも同然だ。これがなければまだまだ一緒に暮らしていけたというのに。
悔しい。
本当に、悔しい。
ネットでシュピゲラウの公式サイトを見てみたが、もう売ってない。
悔しいEE:AE474
いいグラスであった。
私のような人間に「いいグラス」などという世界を教えてくれて、ありがとうである。
かくして今は、オマケのグラスにアイスコーヒーを入れている次第だ。
お似合いだぜ。