苦学生、とういうイメージであった。若い頃の父。
新聞配達をしながら、夜学に通って大学を出た。
大酒飲みで豪快なオヤジだったが、共にインテリでもあったのだ。まぁ父ぐらいの世代の人は、勉強は「やりたくて望んでする」世代である。
私ぐらいの世代になると恵まれて来るので、手段として嫌々やらざるを得なくなる世代になる。
やりたいと思わなくても、勝手に勉強の方が迫って来るのだ。有難みなどない。
出版社に入社した父は、仕事人間となった。
共に大酒飲みであることには変わりはなかった。
酒は飲んでも、仕事はしているのだ。まだまともな部類だと思っていたんだが。
「お前達にも、こ~~んな小さい時には良く飲ませたなぁ、ガッハッハEE:AEB30」
「お兄ちゃんなんてな、飲ませてるうちにどんどん飲むようになっちゃってな。とうとうお母さんが怒ったんだよ、何とかしろと。」
まだ膝にのせてご飯を食べさせたりするほど、小さかった頃だと言う。
「だから一度、ビール飲もうとした時に、黙ってウィスキーを飲ませたんだよ。そしたらな、ギャーって泣いてな(笑)それっきり飲まなくなったよEE:AE471」
おい。
飲ませるのもおかしいが、ウィスキーでやめさせるのも変だろEE:AE482
聞けば父は、子供の頃は炭鉱育ちで、学校でも「炭鉱の子」はちょっと特別な集団となっていたらしい。
学校は行ったり行かなかったり、時々焼酎のボトルをせしめてはみんなで山へ登り、酔っ払ってひと眠りしたら山を下りる、なんていうことをしていたらしい。
それが小学生の頃。
それが、夜学とはいえ一応ちゃんとした大学を出て家庭を構えることができるのである。
一体どこでその転機があったのか。
気になるから知りたいところではあるが、父の話は長い。
そして最後には必ず恨み言に繋がるので、扉を開けるのはためらわれるのだ。
こんな父も、すっかりお酒に弱くなった。
父の人生も、最後の段階に入っているのだろうか。