人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ボクたちはみんな大人になれなかった / 燃え殻

う~~ん、これは・・・・・・。

非常に苦手なタイプであったEE:AE4E6

主人公「ボク」の恋愛回想録とでもいうか。

43歳の「ボク」は、今でこそ華やかな世界に身を置いているが、そもそもは地味で覇気のない人間であった。

ある日ふと電車の中でfacebookを開くと、「知り合いかも?」のところに「彼女」が挙がってきたのだ。

今までたったひとり、自分よりも好きになった人。

その人との不思議で魅力的な時間が蘇る。

その時電車は駅に着き、人にもまれた勢いで「友達申請」の文字に触れてしまい、それは送信されてしまった。

彼女の名字は変わっていた。

冴えない男との写真。

「雨が止んだらリップクリームを買いに行きたい。」

いつものように一緒にホテルを出た彼女とは、それきりだった。

もしバック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンに乗れるなら、あの日に戻りたい・・・。

主人公の「ボク」は派手な世界に染まらない控えめな人間なのだが、文章がキザで鼻につき、誰もかれもキザに見えてくる。

出てくる女性はいわゆる「不思議ちゃん」で、それが魅力的なのはそこに恋した「ボク」だからなのだ。客観的に見ると、芝居がかっていてリアリティが感じられない。

小洒落たドラマである。

そもそも恋愛事などもう縁がない環境で、こういった甘酸っぱい思いを共感すること自体が難しかった。その渦中にある人なら、全然見方は変わってくるかもしれない。

それにしても、主人公は地味で控えめなのに、小説から漂うこのドヤ感はどこから来るのか。

それは「自分はその他大勢とは違う」という、どこか自尊が垣間見えているからに思える。

そんな人間同士が出会うストーリーだ。

奇跡の出会いのように盛り上がるふたりだが、共感できないので勝手にやってくれという感じになる。

洒落た言い回しのオンパレードも、然り。

上手いこというなぁとは思うんだが、それが計算されているようでどうにも同化できないのである。

辛口になったが、これはもっと若い人や洗練されたものが好きな人に向いた小説だと思う。

枯れた50歳には接点がなかった。

ぽ子のオススメ度 ★☆☆☆☆

「ボクたちはみんな大人になれなかった」 燃え殻

新潮文庫