人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

マザー、ファザー

相変わらずだ。

12歳になったエルだが、相変わらずの脱糞キャットである。

もう悟った。あれは「できない」のではない。「しない」のだ。故意に。

どうやらトイレが相当お気に召さないようで、見張っていると仕方なく入るが、抜き足差し足でまるでマンガだ。

裸足で生ゴミの床を踏めと言われたら、あんな感じになるだろう。

見張っていると、嫌々入る。

誰もいなければ、床にする。

もう12歳だ。

今さらどうにもならんのか。

もう策は出尽くした。

しかしだ。若干功を奏したものもあった。

ご褒美作戦である。

故意に脱糞する能力があるくらいなのだ、「ちゃんとやればオヤツがもらえる」ということも覚えるらしい。

ではなぜそれを続けていないのかというと、アレルギーが出るので食べるものがかなり限定されてしまったのだ。

アレルゲンとして疑わしい添加物や穀物の入っているものを避けると、市販のものではほとんどないと言っていい。

鶏肉を茹でたこともあったが、いかんせん大量にはあげられない、冷凍しても少量を解凍するのが煩わしい。

結局、こちらがEE:AE4F5を大人しく拾うに至った訳である。

ところがある日、猫用フード売り場を見ていると、乾燥したササミを売っていたのだ。

これなら日持ちするし、必要な分だけちぎってあげられるじゃないか。

早速買って帰り、今、再びしつけているところなのだった。

現在のエルの真っ当なトイレ率は、3割というところか。

それでも私がいればご褒美が貰えることを覚えつつあるようで、トイレ後に呼ぶと、すっ飛んでくる。

ところが、すっ飛んでくるのはエルだけではない。

名前を呼びかけた後に袋をガサゴソする音がすると、「何か旨いものが出る」ということを全員が知っているのだ。

4匹相手にササミを千切るのもホネだし、あれは高いのだEE:AEB64悪いがバラまく訳にはいかない。

なので、ササミを出す気配を気取られないようにしなくてはならない。

静かな昼下がりであった。

エルはソワソワしながら、私の顔を盗み見ている。

床でしたいのだ。そうはいかんよ。私は「エルEE:AE4E5」と低く凄む。

散々ウロウロした挙句に観念してトイレに入り、無事、用を足す。

私はササミの袋を手にしたが、この静寂、3猫は寝ているが、彼らは食べ物に関する音には非常に敏感なのだ。

かと言って、音を消すことはできない。

ならば、上書きだ。

急いでスマホを手に取り、YouTubeを立ち上げる。

最後にかかったのであろう曲をそのままかけて、寝ている姉妹猫の横に置いた。

ライブの課題曲であった。

私が言い出した、大好きな曲である。ジャーニーの「マザー、ファザー」。

物悲しい旋律が、流れ出す。

崩壊した家庭を歌う、悲しい悲しい曲である。

ピアノのイントロから、張り詰めたような音色のアコースティックギター。

ササミ、オープン~EE:AE482

エルはトットコやってきて、鼻息荒く食べ始める。

曲は徐々に盛り上がり、ますます悲劇的に響いていく。「父よ、母よ!」。

その横でスヤスヤ眠る、姉妹猫。

ササミがっつくエル。

こうしてやっと、ご褒美タイムをクリアした。

後で思い出したが、前は風呂場であげていたんだった。

何の曲が出て来るか分からんし、今後は風呂まで来てもらうことにしよう。

こんなことしなくてもいいようになってくれれば、一番いいんだけどねぇ・・・。