人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

3日前の逃避

夜。

ダンナは五線紙を置き、パソコンと向かい合っていた。

むー、とモニターを睨んでいるかと思えば、ハー、と深いため息をつく。

決心したようにちょっと五線紙に何かを書き込んでは、ハハハッなどと泣きそうな顔で笑う。

リハは3日後だ。今回もギリギリの橋である。

ダンナはネットの譜面のキーを変えて、譜面に起こしているのだ。

移調するだけだ、答えが出ているものを書き換えるだけなのだが、よほど面倒なようでずっとこの有様である。

冷蔵庫を漁る。

お菓子の在庫を探る。

ちょっと座ってはウロウロして、まるで集中できていない。

馴染みのある風景だ。

コピーしている時の私とソックリじゃないか。

気持ちは分かる。

だからツボも分かる。

「チョコレートあるよEE:AE471

「チョコEE:AEB2Fえっ、ああ、いいかもEE:AE482

普段はチョコなど食べないのに、やはり食いついた。

この現象、私は「脳の疲労が糖分を欲している」などと考えている。

私はその横のテーブルで、やはり譜面を書いていた。

市販のバンド譜を、自分が弾きやすいようなキーボード譜に書き換えていたのである。

これもある意味、答えのあるものの書き換えだ。コピーや音色作りよりもナンボもマシ。

チョコレートが必要な状態ではなく、のんびりやっていた。

ただし、根が集中力のない人間だ。ダンナの様子がおかしくて、すぐにそっちに持っていかれてしまう。

お互いが、お互いに邪魔をしているような状態である。そして、そこに現実逃避をする。

私達は相手を逃げ場にして、目の前の面倒から目を逸らしていた。

「やたら冷蔵庫に行くよね(笑)」

「分かる、分かるよ!」

「無駄に猫いじったりして。」

「耳かきとかその辺にあるものにすぐ気がそれる。」

意気投合。だからどっちも頑張れとも集中しろとも言わないのだ。作業は進まない。

「一小節書いた。」

テーブルのつまみをかじる。

「線を引いたぞ!」

大五郎をいじる。

「転調した!」

転調しただけで休憩だ。

やがて「コマーシャル、コマーシャル・・・。」などと言いながら、足の裏をマッサージ機で掻き始める。

CM多過ぎEE:AEB64

そのうちそのCMも通販並みの長さになり、しまいには「天気予報入ります」。

結局、「あとはもう、繰り返しでしょ。」と言って止めてしまった。

そもそも時間はすでに、12時半を回っていた。

おしまい。

続きは明日、あと1曲。頑張れ(笑)

で、譜面はいいけど、いつ練習するんだろう?

リハは明後日である。