人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

深夜、静かなる戦い

深夜。

私はベッドの上に座り、困り果てていた。

その晩も、良く飲んだ。

一週間の疲れもたまっており、ぐっすり眠れそうである。

枕元では愛猫が待っていた。

普段家にいる時は、全く着るものに無頓着である。

ブカブカのジーンズにトレーナー。いくつかのパターンをひたすら繰り返している。

どうせ外に出る時は、上着を着てしまうのだ。

ミッキーマウスの赤いトレーナーも着るし、パーカーの下からシャツがはみ出していることもある。

しかし、外で飲むとなるとそうはいかない。

私だって、好きでダサい恰好をしているわけではないのだ。家には気に入った服もある。

ここが本番だ。

私は「選んで」、私なりに着飾っていく。

それが今、自分を苦しめていた。

そのとき来ていたのは、首の部分がモコモコのマフラーのように膨らんだカットソーであった。

体にピッタリとフィットした薄手のもので、袖が長く掌が隠れるほどだ。

細身に見せるためか、袖もピッタリと腕にフィットしている。

ストレッチのような加工ではないので、まんま体にそのサイズで張り付いている状態だ。

そしてその下にヒートテックの長袖が一枚、なんのテクもない薄手の長袖を一枚、合計3枚の服を重ね着していたのである。これをどう脱いだらいいものか。

とにかく、脱ぎにくいことは明らかだ。

一番上の一枚が、とてつもなく苦しい。寸分の遊びも伸縮性もなく、うまく脱がないと破れそうだ。

しかしこの1枚を丁寧に脱ごうとすると、その下の2枚がくっついて来ようとする。

それをこまめにはがしながら3枚脱がなくてはならない。

もういっそ、3枚一緒に脱いでしまうか。

腕を交差して一番下に着ている服の裾をつかみ、3枚まとめてめくり上げる。

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1番上のカットソーが、とにかく締め付けもしない代わりに全く伸びもしないのだ。

そのくせ体にピッタリ張り付いているので、そこへ2枚足して一緒に脱ごうとするとビクともしない。

軽い労力ながら、「脱ぐ」という面倒を3回繰り返すか。

とてつもなく負荷のかかる1回で済ますか。

私は逡巡していた。

酔っていたのだ。3回よりも1回を選ぶ。

フン、ガー!!

脇の下で一度引っかかり一度は諦めかけたが、ここが正念場だ。

ガァッと言って服から首が外れ、フッと体が楽になった。まだ両腕に服は残っていたが、ここまできたらあとは消化試合である。

ツルンと脱いで、裏返しのままタンスの上に丸めておいた。

勝ったな・・・。

そんな気持ちになる。

あぁそうだ、次はあれを1枚ずつにバラさないとな・・・。

布団の中でふと思う。

服らの最後の反撃だ。時限爆弾のように、時間差で来るとは。

深夜の小さな戦いであった。