ダンナはししとうが好きだ。
ししとうだよ、一体どうしたらあれに特別な魅力を感じることができるのか、私には不思議でしょうがない。
ピーマンも好きで、切って出すだけでサラダとしてそのまま食べたりしている。
ピーマンを、だ。
これは「理解できない」なんてものではない。「ありえない」。
あの青臭さがいいと言っている。
別に嫌いじゃないが、決して良くもないと思うのだが。
そんなんで、ダンナは時々ししとうを買って来ることがある。
私自身あまり好んで食べないので、ほとんど弁当のおかずだ。
ダンナはできるだけそのままの味がいいというので、塩こしょうで焼くだけだ。弁当のおかずとしては、優秀である。そういう部分では、私もししとうは好きだ。
ある日、スーパーの一角にある地元野菜のコーナーで、ししとうを一袋買って来たのだ。
採れたてのものが多く、新鮮な野菜が並んでいるのを見ると、つい手に取ってしまう。
ちょっと値段は高いが、どれもツヤツヤでとても綺麗だ。
そんな中から、鈴木なにがしさんのししとうを一袋。
早速弁当に入れてみたが、家に帰るとダンナは、「弁当のししとうに当たりがあった。」と言った。
私はししとうを食べること自体が少ないので、あまり当たったことはない。
当たりとは、時々混じっている辛いもののことだ。
それでもしょせんししとう、当たりと言ってもそう酷く辛くはない。ししとう如きが辛いから、油断してちょっと辛く感じると言う程度であろう。
そのししとうの残りを、酒のつまみにして全部焼いて出したのだ。
7、8本ぐらいだっただろうか。
面白かった。
ほとんど当たりだったのである。
辛いものが苦手なダンナは「また当たりだ」、「辛い」と言っていたが、その中にひとつキョーレツなものがあったらしく、涙目で悶絶していた。
氷水をください、と懇願されて持って行くとそれをグビッと飲み、中から氷を取り出して飴玉のように舐め始めた。
「痛い」「痛い」。
これですっかり懲りてしまったみたいで、皿には4本のししとうが残された。
バカな、ししとうがそんなに辛くなるわけがない。ししとう如きが。
しかし残り4本のうち3本は当たりという高当選率にまず驚き、最後の1本で私も泣いた(笑)
夏の山の方でハバネロを買って帰ったが、あんなものの比ではない。
これまで辛くて氷を口に含んだことは過去に2回。
1回目はデスソース、2回目はカレー屋さんの店主が特別に作った超激辛カレー。
栄えある3回目が、まさかししとうとは。
「さっきまであんなに好きだったのに・・・。」
空になった皿を見て、ダンナが呟いた。