それに気づいたのは、おとといのことである。
ブログの下書きをしていてふと左手の甲を見たら、それがなかったのである。
マッツァオ。
ヤッバイ、いつからないんだ、ちょっと待って、今日は月曜日、もしかしておととい酔っ払って・・・。
指輪を無くしたのは、初めてではない。
何しろサイズが緩いので、時々なくなるようである。
「ようである」というのは、そのほとんどが酔って無くすという状況で、不可抗力か故意がわからないからである。
まずいことになった。
これは「結婚指輪」などという大層なものではないが、それに代わる夫婦の証明でもあった。
これまでは何とか出てきたが、そのどれも、思いもよらない場所から出て来たのだ。自力で探して出て来るとは思えない。
どうしよう。
また無くしたなんて言えない。
バカみたいに飲み過ぎたことを、責められるかもしれない。
いや、待った。
酔って無くした確率は高いが、絶対とも言い切れない。
緩いのだ、どこかでスッポ抜けた可能性もなくはない。
いやいや、待たなくていい。こっちの方が見つけるのが難しそうだ。
決めた。
今回もとことんしらばっくれる。
自分ですらいつからないのか分からなかったぐらいだ、ましてやダンナが私の体の末端などに気を配るとは思えない。
言わなきゃ気づくまい。
気付かれたら白状すればいい。
今回は、絶望的と思われた。
日曜日に泥酔したルートは、カラオケ→飲み屋→飲み屋2→バス→家、である。あまりにも広すぎる。飲み屋2など、今となってはその存在すら分からない。
しかし、それは向こうの方からやってきた。
「オレのコートのポケットに入ってたんだけど・・・。」
は??何で!?
「わかんねー・・・。」
かくして今回も、「わかんねー」状態で手元に戻って来たのであった。
本当に不思議である。
「もうこの指輪はやめようか。」
ダンナが言った。