「ぽ子~、悪いんだけどさぁ・・・。」と言いながら作業着を出す時は、ポケットがほつれた時である。ぽ子がビビる時ね。
このままではポケットをスルーして中身が落ちてしまうので、格好悪くても何でもいいから縫ってくれ、ということなのだ。
作業ズボンのポケットだ。
カーゴパンツのポケットのように大きく、布地が厚いので結構大変なのである。
あっても使う場面か分からんが、ミシンがないのでいつも手縫いで無様であった。
厚い布地を折り込んでさらに厚くなっているところに、針を通すのである。角の所などさらにさらに厚くなっているので、簡単には通らない。
針の先だけ刺したらそのまま針をどこかに立て、両手でムオーと布を引っ張って押して1回1回縫っていくのだ。
こんな状態で細かくは縫えないし、子供が縫った雑巾みたいな仕上がりで女として情けないレベルである。こんなものをダンナの会社で着られるのは恥だ。
そしてこの修繕されたポケットは見た目が悪いばかりでなく強度も甘いようで、たびたびほつれてまた修繕の依頼が来る。
それはまた、タンスの上にたたまれて置きっぱなしであった。
いつかはやらねばならないのだ。
しかしあの針を刺す時の痛みと血圧の上がりそうな踏ん張りを想像すると、気が重い。
何とかならないものか・・・、と考えて、ひらめいてしまったのだ。
もうボンドでいいじゃん。
どうせ縫ったって、すぐにほつれるのだ。アロンアルファとか強烈なヤツを使えば(昔あのCMを初めて見た時には本当に驚いたものだ)、見栄えも強度もよっぽどいいだろう。
早速私はホームセンターで接着剤を買ってきたのであった。その名も「布ッチ」。
買ったのは結局、布地専用の接着剤である。洗濯もクリーニングもOKと書いてあったから、こっちの方がよりいいだろう。
容器は木工用ボンドのようなプラスチックの太ったもので、先が細くなっている。
これをポケットのほつれた部分に沿って塗ればいいだろう。
簡単EE:AE5BE
・・・でもないEE:AEB64
まず、中身が出てこない。
ノズル部分を外して中を見たら、ちょっぴりしか入ってないじゃんEE:AE482
くそー、騙されたみたいだが仕方がない、これをノズルの先まで落とさなくては。
容器を逆さまにして、バンバン叩く。
バンバンバンバン叩く。
なっかなか出てこない。
バンッバンバンッバン本気で何度も叩いて容器を押してやっと、
ブッ
とそいつは屁をこいた。
屁が出たということは、そこまで来ているということである。
今度は容器を逆さにしたままブンブン上下に振り、何度も押してみる。
すかしっ屁としぶりっ屁を何度か繰り返した後、やっと中身が顔を出す。
それをポケットの縫うべき部分に当て、さらに力を込める。
う~~~~~~~~ンッEE:AE4E5
硬っEE:AEB30
冬場のハチミツ状態だ。
ウ~~ン、ウ~~ンとバカ力を出して、何とかノルマ部分を塗り切った。
針で縫っても接着剤を縫っても、血圧が上がりそうな作業である。
まぁこんなんでも、縫うよりは楽であった。
後は強度だけが心配だが、考えてみれば、どんなに汚かろうが無様だろうが、縫ってさえあれば物が落ちるということはないはずである。
しかしボンドの場合、剥がれたらポケットの中身を支えるものがない。
今さらながら、雑でも縫うべきだったか。
作業着のポケットって、何を入れてるんだろう・・・。