この年の3月29日、ヒルビリーバップスというバンドのボーカル・宮城宗典が亡くなった。
事故とも自殺とも言われているが、その突然の死に、ファンもメンバーも驚愕した。
実は私はこのバンドについて良く知らず、友人が好きだったのだ。
彼女も大層ショックを受け、5月5日の追悼ライブへと一緒に向かったのであった。
場所は日比谷野音。
12時から整理券発券開始のところ、テレテレ出かけていったために着いたのはもう2時。
とっくに整理券はなくなっていたが、それどころかチケットは前日の11時にはもう完売していたとの話で訳が分からん。
一帯にチケット難民が溢れ、その数は減ることがなかった。
野外ステージである。リハの音が聴こえてくる。こうなるとなかなか諦めがつかない。
噂では、同じ事務所のバービーボーイズも来ているとか。むしろ私はそっちが見たかった(笑)
これは何としてでも入りたい。
友人と話し合う。
①誰かに譲ってもらう。
②潜り込む。
③警備員に頼み込む。
③ありかよEE:AEB64夢があっていいが、バカでもある。
で、一番現実的な①からいくのだが、これだけチケットがない人間が溢れているのである。
持っている人は余ってなどいない。
そして持っている人はこんなところにいないで、どこぞでノンビリお茶でも飲んでいるのである。
そして、難民の中には「チケットがあるのに入れない」「整理券だけがある」という人もいて、何も持たない私達のような者は、難民の中でも最下層であるということが分かった。
①は無理だ。
じゃあもう②しかない。
③は却下か、安心したよ(笑)理由は「無理そうだから」。当たり前だろうが。最初からそんな案を出すんじゃない。
かくして潜り込むことにしたのだが、野外会場だ、そこそこ隙はある。
しかし人の目というものもある。
ここに残っているのは、チケットがなくて入りたい人ばかりのはずだ。
それを我慢している人たちの前で、我慢をしないのだ(笑)許されるか?
会場の周りをチェックしていると、・・・これだけの人がいるのだ、同じようなことを考える輩もそれなりにいる訳で(笑)
フェンスを越えて、会場の裏に隠れている人を発見。それに続いて何人も潜り込んでいる。私達もそれに紛れ込んだ。
そして本番が始まるのを待った。
それぞれに物陰を見つけ、じっと気配を消している。
何とも言えない気持ちだ。
スリルを楽しんでいるような、大きな賭けをしているような。
同志がいるのが心強い。みんな、一緒に頑張ろう、あの塀を越えるのだ、あの先に私達の求める場所があるのだ、こんなところで捕まってたまるか。
な訳ねーだろ、警備員に見つかって怒られて追い出されちゃったよEE:AE4E6
この時のどさくさで何人か中に入ったが、生き残れよ。私達の分も生きてくれ。まるで戦争である。
諦めがつかず、しばらくウロウロと入れそうなポイントを探し回ったが、「同志」がいないとコトを起こす勇気もなく、途方に暮れていた。
やがて歓声が聞こえてくる。
途端にそこらじゅうにいた人たちがフェンスを乗り越えて中に入ろうと殺到したので驚いた。
この時も何人か中に入っていったのが見えたが、彼らはどうなっただろうか。
ところで私が中に入ろうとしなかったのは、フェンスを乗り越えて警備員をかわす自信がなかったからである。
戦争でこの町が侵略されたら、私は助からんチームだ。映画のチョイ役。すぐ死んじゃうヤツ。
結局、ライブが終わるまで外でボーッと聴いていた。
その後、献花でまたどえらい並び、手を合わせてやっと帰ってきたのであった。
そして養老乃瀧で飲む。
漢字が書けなくて、「ヨーローの滝」になっていた。