そして、飲んで帰ってくると、ルンバは充電されていた。
新しい家族に命が吹き込まれたのである。これを酔っ払いが放っておくはずがない。
ボタンを押すと、ピポポポ、と元気なメロディが流れ、ルンバは動き出し、猫は一斉に逃げ出した。
「ルンバ、こっちこっちEE:AEB30」
「ああっ、食べたEE:AE482いい子だねぇ、いい子だねぇ・・・。」
念のため断るが、酔っ払っていたのである。シラフならいくら嬉しくてもここまでは盛り上がれん。
「ルンバー、後ろEE:AEB30」ルンバがゴミに気づかなかったりすれば、シムケン騒ぎである。挙句ゴミの方をルンバの前に持ってきたりする。世話の焼けるやつだ。
一方猫たちは、最初こそ驚いたようだが、自分らに害はないと思ったようで、それぞれ遠くから見守っているうちに思い思いの場所でくつろぎ始めた。
どれ。もうひとつの楽しみを・・・。
当然の結果だ。
ルンバは上からボタンを踏まれて止まり、猫は嫌がって逃げた。
酔っ払いはしぶとく何度も繰り返したが、何度やっても結果は同じだ。
難しいのー。どうやったら猫はルンバに乗るんだ??
それから数日。
ルンバフィーバーもこなれてきて、猫にも人間にもまた平穏な日々が訪れた。
しかしその裏で私は、まだ猫をルンバに乗せる夢を諦めていなかったのだ。
猫は、自分に関心を示さないものには比較的寛大だ。
本来、あのようにグイーンと音を立てて縦横無尽に動き回るようなものは苦手とするが、どうやらお互いに干渉しないことでバランスが取れているようである。
夢の成就のためにも、無理してこのバランスを崩してはならない。
今は信頼を積み重ねる時なのだ。
辛抱して見守っていた。
ある日のことだ。
久しぶりに晴れた午前中のことである。
猫は寝ていた。
ラッキーとミュウは座椅子に、大五郎は猫用のベッド、定位置のないエルは(最近は寝室に住んでいるのである)ドアの前の床に寝そべっていた。
ルンバは一生懸命働いていた。
ドアの前で伸びているエルの目の前を行ったり来たりしていて、エルはそれをボンヤリと目で追っていた。
怖がっている様子はない。むしろ大五郎がうちに来た時のようである。新しい仲間を観察しているような表情。
彼女たちは確実に距離を縮めている。
一番先に乗るのはエルなのではないか。
その時、ルンバがエルに突っ込んでいったのだ。
これまでいい距離を保ってきたというのに、これからが大事だというのに、焦らずゆっくりという時なのに、ルンバが突っ込んだのである。
当然エルはぶったまげて飛び上がった。飛び上がって走ってきて、なぜか私の顔を見た。
その後ろでルンバはこちらのことなど気にもかけず、ガーガーと掃除を続けている。
エルは振り向きもしない。まるで後ろには見てはいけないものでもいるかのように背中を向けたきり、私の顔を凝視しているのである。なんでEE:AEB64
そしてルンバが再びエルに迫ってきた。エル、後ろッEE:AEB30
しかしそこはさすが動物、気配を感じてサッと身を翻し、床に伏せて戦闘態勢に入った。
あぁ、二人の距離が一気に遠くなってしまった。「他人」より遠い「敵」だよEE:AE4E6
しかし、いよいよルンバが目の前に来ても、エルは動かなかった。
怒っている感じも怖がっている様子もない。
う~ん、大五郎が来たときにも、こんなことがあったかも。
意外とこの二人は仲良くなれるかもしれない。
エルがルンバに乗った暁には、その姿ではなくそれを見て悶絶しているダンナを撮ってやろうと思う。