一週間ほど前のことだ。
キッチンで調理をしていたら、換気扇の方からカサコソという音がした。
不吉だ。
虫か?
それとももっと思いもよらないような、思いもよらないような、・・・何かだ。それは必ず動く。
不吉だ。
恐ろしい。
私はその後の換気扇の使用をやめてダンナが帰るのを待ったが、やがて音はしなくなってしまった。
仕事から帰ったダンナに話すと、彼は「ゴキジェット」を手に換気扇のカバーを外した。結婚して良かったと思う瞬間である(笑)
「何か」はもう音を立てなくなっていたが、それはそれで「以前音を立てていた何か」が落ちてきそうな恐怖がある。
ところが何も出てこなかった。
一応殺虫剤を吹いたが、何の反応もなかった。
これが一週間ほど前の話だ。
今日も私はキッチンに立っていた。
週末を除けば私もキッチンに立つのだ。クララより立ってるぞ。
そしてまた、換気扇からの音を聞くのである。
今度はもっとはっきりとした、存在感のある音だ。
存在感。
前回は「風のせいかも」と言われればそんな気もしてくる程度の音だったのが、「何かが起こっている」と気づかせるような音なのである。
外は雨が降っていた。
この雨が何か・・・、窓を開けようとしたところ、明らかにカサカサッと軽い音がして、何かが入ったことを示したのだ。
何かが入ってきた。
しばらくは小さくカサカサいっていたそれは、一瞬換気扇のカバー越しに姿を見せた。
ぶったまげて「ひっ!!(もう長いこと「キャー」という悲鳴を出していない)」と言って固まった私は、両手を胸に当てて芝居じみたポーズになっていた。これにもビックリだ(笑)
鳥だ。鳥が換気扇に入っているのだ。鳥が、換気扇に。そんなことが起こるのか。
しかしちょっと嬉しくもあった。鳥が、換気扇に入っているのだ、我が家の換気扇にEE:AE595
・・・って、どうすんの、これ??
やがて鳥は換気扇の中で飛び回り出し、バサバサと羽ばたく音が聞こえてきた。
途端に、寝ていたはずの我が家の猫が流し台に集まってきたので、またビックリ。
カサコソの時点では、誰も感知しなかったのである。
野性の本能か、鳥の羽ばたきには鋭く反応するらしい。
さて、どうしたことか。
やるべきこと:鳥を救出して外に出す。
その方法:虫取り網で捕獲→リリース。
準備:猫の排除。
よし、決まった。鳥が弱るといけない、とっとと始めよう。
上手くいくかな??
まずは起き出してきた猫3匹を隣の部屋に移す。
残りの1匹はまだ寝ているのか、姿が見えないのでそのままにしておいた。
そして洗面台の横に立てかけてあった虫取り網(以前巨大な蛾が入り込んでから常備。)を片手に持ってひと呼吸置き、そっと換気扇カバーを取り外した。
予想外に動きがなかったので覗き込んでみると、換気扇の羽の上にスズメがとまっていた。
す~ず~め~EE:AE478カワユス、ヒャッEE:AEB30(とっさに「キャッ」と言わなくなって久しい。)
閉じ込められていたスズメは、新しい世界へと飛び出していった。
壁に下げられていたギターのヘッドにとまり、次にはキャットタワーのてっぺんを目指す。
すると突然、寝ていたはずの残りの1匹が大声で鳴きながら後を追い始めたのだ。
こいつはヤバい、運動神経だけでいえば私より優秀な猫だ、私より早く捕まえてしまうかもしれない。
私は虫取り網を置いてラッキーを抱き、隣の部屋へ入れ、・・・ようとしたら、そこに入れられていた他の猫たちがスズメ目指してドアに殺到した。
スズメ、すごい人気だ、4匹も同時に私には制御できないぞ。
私はとっさに抱いていたラッキーを3匹の前にさらけ出して「ウォー!!」と威嚇した。これでいいのか!?
結果オーライだ、3匹がたじろいだ隙にラッキーを押し込んで、ドアを閉める。
フー。これで私とスズメの愛の時間一騎打ちだ。
ところがこれが、全然捕まらないのねEE:AE5B1
網ったって虫取り網だ、そんなに大きなものではない。スズメにヒットしてしまうんじゃないかと思うと、こっちの方でよけてしまうのである。
もうこのままスズメと暮らすかな、と思いかけた頃、うまい具合に網に入れることができた。
ピーと鳴いた。可哀想。
スズメにしてみれば、どえらい恐怖体験だったはずだ。
無事、外に逃がすことができたが、私に感謝どころではなく憎悪を抱いて去っていったことだろう。
昔話ならこの後スズメが小判とか持ってきてくれるのだろうが、現実は厳しい。
一週間前に換気扇の何かが外れたのだろうか?
再び鍋を火にかけ、シチューの続きに戻る。
新聞紙にフンがついていた。