人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

5.5拍子のストレス

私はまた立ち上がってウロウロし、冷蔵庫を開けて何もないことを確認すると、鍋に直接箸を突っ込んだ。

どうしてこう、集中力がないのでしょう。

AD/HDという行動障害があるらしいが、そのケがあるんじゃなかろうか、私は。

曲をコピーしていた。

セッションでやるかもしれないという曲があり、キーボードパートを譜面に起こしていたのである。

まず、取り掛かるまでが長い。

パソコンを開けば、お得意さんめぐりが始まる、YouYubeを開けば「おすすめ動画」などというものにいとも簡単にひっかかる、挙句に課題曲の動画はなく、仕方ないので上手にコピーしている他人様のバンドのコピーだ。コピーのコピー。

シャーペンの芯が折れるジレンマは「鉛筆がいいですよ」というアドバイスにて解決したが、うちにある鉛筆は2B。ベラ濃い。

楽譜に濃淡でもつけて芸術的に仕上げるならとにかく、今度はこの芯の濃さと軟らかさがストレスである。

そして何よりも、楽譜を書くことがストレスなのだ。

楽譜とは、算数である。

4拍子の中には1拍が4つ、そこに0.5拍とか1・5拍とかを入れて、合計をピッタリ4拍にしなくてはならない。

これはもう、とうの昔に投げている。4拍子の曲が5.5拍子になっていたり、ターンタタがターーン・タタになっていたりなどは珍しいことではない。

今では検算すらしなくなったので、もはや正しい部分の方が少ないのではないかと思われる。

そんなんで役に立つのかと言われれば、こんなんでも役には立つ。

だいたい合ってりゃ、曲は知ってるのだから、書いた本人には分かるのである。

他人に見せられない楽譜だ。身内であるダンナには弾かせてみたいが。

そんなアバウトな楽譜でも、1小節も書くと飽きてしまい、腹が減る。

ストレスは食欲の中枢を壊すのだろうか。手当たり次第に口に突っ込んでいた。

明太子、ご飯、肉団子、チョコレート。

こんなことをしているから、余計に時間がかかるのである。

無駄な時間が積み重なるほどに、次への作業が重くのしかかる。チョコレートに逃げたくもなるじゃないか。

猫も格好の逃げ場である。

別にいつもと変わらない寝姿が、特別可愛らしく見えてくる。

コチョコチョコチョ~EE:AE5BE猫もいい迷惑だ。早く終わることを願っていたことだろう。

その願いは叶った。

もう完コピは投げた。そもそもこんな得体の知れないバンドのコピーである。それを完璧にコピーしてどうする。

しかしとても上手いバンドであった。だからコピーしたのだが。

これで苦行から開放された。

とはいっても、楽譜が出来上がるということは非常に喜ばしいことである。

ないから作ったのである。なかったものを作り上げたのである。

どこにも売ってない楽譜だ。

厳密に言うと今日のはちゃんと市販の楽譜があったが、いい加減なので参考程度にしかならないものだったのである。

そして涙と汗の結晶だ。他人には全く役に立たない代物だが、私には貴重な財産である。

忘れた頃に「あの曲またやろう」と言われ、何度あのしょうもない楽譜があったことに感謝したことか。

能書きはいい。

弾けなくては意味がない。

これは、練習とセットになっているのである。

練習してこよEE:AE5B1