いや~、笑った。もう価値観ブレブレである。今なら得体の知れない壷でも買ってしまいそうだ。
母の寝室に、ベッドを置くことになったのだ。そのために、ベッドのスペースをあけなくてはならない。手伝いに行って来たのだ。
大掛かりなのは本棚の移動ぐらいだと思い、ナメていた。
まず本棚の中身をどかして棚を動かすのだが、花瓶だ(笑)本棚の一番上に、なぜか埃だらけの花瓶がズラリと並んでいた。
中ほどの本をどかすと、裏から笛が出てきた。中国製の長い笛。未使用。
何しろ、本自体がアンティークだ。変色なんていうレベルではない、骨董である。
もはや存在価値は、読まれるためではない。
私が本棚を動かしている間に、母は部屋の真ん中に座り込んで、こまごまとした物を整理していた。
時々「あれこれ(笑)」、「こんなもの、しょうがないかしら」という声が聞こえていたが、私の次の作業もこれであった。
この家には非常にたくさんの袋と箱が置いてあり、中には「とりあえず」と一時的に入れたものが溢れている。
箱と袋の他にかごや収納箱もあり、不用品は相当な数に上ると予想された。故に、母は手をつけずにさらに溜め込んでいくのである。
とりあえずこの寝室の分だけでも、と、私も箱を開けていく。
明らかにいらんだろうものは、一声かけて捨てていく。母は若干の抵抗を見せるが、例えば古ボタン。
例えばガビガビに固まった塗り薬。
例えば小さくなったピンクの色鉛筆。
戦中戦後のモノ不足の時代を生きた母である、捨てられない気持ちは尊重したいが、増える一方なのだ。
そして、「今後使うだろうか?」の問いには笑うしかなく、ゴミ袋はどんどん膨らんでいくのであった。
カツラはそのまま捨てるとゴミ屋さんが首かと思って怖いよ、と言ったら、「ゴミ屋さんを驚かすのが楽しいんじゃないのw」と笑った。怖い。
それでも惜しい、というものが出てくる。
そしてそこには「価値観の違い」があり、母が良くても私には良くない、もしくは逆、というケースがしばしば起こる。
こんな作業を繰り返しているうちに私の価値観もおかしくなり、母が捨てるといった赤ベコのキーホルダー、外国のコイン、切手ひと箱分、紫色の古ボタン、しおり、といったものを持ち帰ってきてしまった。ハハハ。
「あぁ、これはドリーム・・・、あの、夢をね、・・・」
もうこのドリームキャッチャー、ネットと蜘蛛の巣の境い目が分からんEE:AEB64
ハンドクリーナーで蜘蛛の巣を吸うと、飾りの羽の部分が魔法にでもかかったように粉々に崩れていった。
それと一緒にわらじが掛けてあったが(わらじEE:AEB64)、さすがにこれはもういらない、と母は言った。
言ったのだが、「あら、これ何かしら??あらこれ、花瓶だわw」と訂正。
良く見るとそのわらじの中心部には細長い筒が取り付けてあり、一輪挿しになっていたのだ。
誰が作ったのか知らんが、どうしたらわらじを一輪挿しにしようなどと考え付くのだろうか。そのせいで母は、捨てることを思いとどまってしまった。
どうにも踏ん切りのつかないものは、保留の箱に入れていった。困ったものばかりである。
そのほとんどが土産と思われるが、化石数個(化石EE:AEB64)、ポルトガルのカラフルな布、人形の形の折り紙に入った爪楊枝、手作りのスカーフ(ド派手和柄)。
化石の入っていた箱を出した時に母は、「これ、困ったわよ」と念を押したが、何と化石の下から出てきたのは、サハラ砂漠の砂であった。
そんなもんどうすんの、と言いかけて、ちょっと惜しい気もしてくる。価値観が崩壊してくる瞬間だ。
何かに使えないか、と考えながらその砂の袋をどかすと、下からもっと大きな砂袋が出てきたのだ。
「あ、サハラはこっちだった(笑)」えっ!?じゃあさっきの何!?というか、もうどーすんのよ、砂ばっかこんなにEE:AEB64
砂は化石と共に、「保留群」に生き残った。もう何がいいのか分からん。
宿題が増えてしまったが(祖母の帯も、まだ行く末は決まっていない)、こんなの、まだまだ序の口である。
母の部屋には、手付かずの箱がたくさん待っていた・・・。