合唱団の練習会場は、2ヶ所ある。だいたい月に半々ぐらいずつだ。
その2ヶ所、路線がぜんぜん違う駅なので、どちらか1ヶ所が出づらい会場になってしまう人が多い。
私もそうだ。
遠い方の武蔵小金井に行くには、バスで駅まで出て、電車を一度乗り換えなくてはならない。
直線距離だとそんなに遠くないと思うのだが、アクセスが悪いのである。
近い方は、自転車で行ける。昨日かっ飛ばして行って、20分ぐらいであった。
練習のあと飲んで帰る時は電車を使うが、普段は自転車である。
家から自転車で行ったことのない場所だったので、ネットで地図を見ながら道を探した。
そこには大きな大きな障害が広がっていた。霊園である。
オバケが怖いので、明るくてもひとりで通る気にはなれない。ここを避けて、大きく回り道をすることになる。それでも霊園よりはマシだ。
霊園を避けるコースを考えたので安心していたが、初日の帰り道に嫌な事を思い出してしまった。
うちの近所に、娘ぶー子が体験した恐怖スポットがあるのである。
小さな川沿いの道で、車も人もあまり通らない暗い静かな通りだ。
ヒエーと思ったが、そこを避けるとなると、さらに大回りしなくてはならない。
家はもうすぐ近くなのである。我慢して帰ったが、後で地図を見ても、如何ともし難いコースであった。
できるだけ毎度、すっとぼけて通ることにしているが、ああいうのは一度「怖い」と思うとパニック状態に陥ってしまう危険性がある。
オバケも怖いが、まだ現れてもいないオバケに恐怖してパニックを起こすという状況はもっと怖い。
前者の恐怖と後者の恐怖は違う。後者は「恥」を含むのである。なんとしても避けたい状況であった。
果たしていつまですっとぼけていられるだろうか。
そんな課題も解決しないまま、霊園を通ることになってしまったのだ。
昨日の練習のあとのことだ。
たまたま自転車組の帰りが一緒になったのでみんなで帰ることにしたのだが、当然のように最短の霊園コースを行くと言う。
行きたくなんかなかったが、「霊園が怖いから遠回りしてくれ」とはさすがに言えず、えーい、ちょっとの我慢だ、長い人生から考えればほんの一瞬だ、と腹を括ったのであった。
人生には「長い一瞬」というものもあるのだEE:AEB64
こういった類の恐怖は極力避けてきたので、ちょっとナメておった。
霊園、真っ暗である。街灯などは全くない。ボーッとしていると、あちこちに突っ込んだりしてしまいそうな程だ。
周りには、果てしないと思われるほど、暗く広く墓が並んでいるはずである。
言っておくが、「墓地」ではない。「霊園」だ。墓の数がハンパじゃない。そして広い。つまり長いEE:AEB64
何かで頭の中を埋めておかないと、「恐怖」が忍び込んでくる。パニックは御免だ。
何でもいいから喋っていなくては。
ここは霊園なんかではない、単なる帰り道だ、近道、ヤッホーEE:AE5B1
明かりは自転車のライトだけだ。それがゆらゆらと揺れて、時々思いがけないものをうつし出す。
怖いっ、前はダメだ、もう下しか見れん。
怖っ、くないっ、ラララララ~、1秒2秒3秒、もうすぐもうすぐ、近道だもんね~~。
地獄であった。
「・・・もうこの道は最後にします。」
やっと出口を抜けて、騒いだことを詫びてから言うと、「その方がいいですね。絶対。」と、簡単に納得していただいた。
みんなと別れて家に近づくと、あぁそうだ、もう1ヶ所あるじゃんEE:AEB67
ところがだ。
あまりにも霊園の恐怖レベルが高かったため、さほど怖い思いもせずにシレッと通ることができたのだ。
パパパパーンパーンパーンパッパパーンEE:AE46Fレベルアップだ。霊園で思いがけず、どえらい経験値を手に入れたようである。
霊園を通れる勇者になどなれなくていいから、もうレベル上げなどしないでいつもの道を通り続けることにする。
ほどほどで十分である。もうコリゴリだ(笑)