人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

四万温泉でタイムスリップ・2

寒いと思ったら、雪が降っていたのだ。

この日はハイキングEE:AE4F9をする予定だったので、複雑な気分である。

そして実際に胃の辺りの気分は、二日酔いで最悪であった。

この時ばかりは、簡素な朝食に感謝である。

予定では温泉のさらに奥に上り、奥四万湖というダムに行くつもりであった。

水になんちゃらいう成分が入っており、人造ながら美しいコバルトブルーの湖である。

しかしここに行くための交通手段がない。

2キロ程で着くようなので歩くことにしたのだが、雪だ。

まぁ小降りである。写真を撮るにもいいかもしれない。決行である。

温泉街にはほとんど雪は積もっていなかったのに、ちょっと上っただけで雪の量が変わってきた。

一応トレッキングシューズを履いてきたのだが、積もった雪の下が凍っていて、ただボーッと歩いていると突然滑るので恐ろしい。

ひと足ひと足集中して、ゆっくりと進んでいく。雪はまだ小降りであった。

前にカップルが一組歩いている以外に、ほとんど人を見なかった。車も通らない。

あんなに綺麗な湖があるのに、見に行く人はいないのだろうか。

孤独な道のりである。静かだ。

滝の写真を撮っている間に前を歩いていたカップルの姿も見えなくなり、全くのふたりきりになってしまった。

時々置いてある熊除けの鐘が怖いEE:AEB64

どんどん雪は深くなっていく。

靴のお陰で冷たさは感じなかったが、圧雪していないので歩きにくいことこの上ない。

長い2キロであった。

やがて前方に大きなダムが見えてきた。おお、ゴールはあそこだ。

その頃、先を歩いていたカップルが戻ってきて、すれ違う。

嫌に早いなとは思ったが、二十歳ぐらいの若いカップルである。湖なんぞよりいいものがあるんだろうよ、ご両人。

しかし、彼らがこんなに早く戻ったのには、理由があるのである。

彼らは私達とすれ違うときに、哀れに思っただろうか、ざまぁみろと思っただろうか。

ダムはどんどん近づいてきた。

大きな大きなダムである。要塞のようにそびえ立っていた。

先に気づいたのはダンナであった。

「・・・・・・あれを・・・・、上るのか・・・??」

最初私は意味が分からなかった。

ダムというものは、水をせき止めているのである。つまりあの巨大な壁の向こうが湖だ。

え?どっかにドアとかあるでしょう。私はダムの下部にドアでもあるのをイメージしたが、それはあり得ないのである。壁の向こうにはなみなみと湖の水がたたえられているのだ。

いいんだか悪いんだか、ふたつある階段のどちらも入れないようになっていた。

一応車道の迂回路はあったが、かなり大回りである。

諦めるしかなかった。目の前まで来たのに。

「もう夢も希望もない。」

行きはコバルトブルーの湖が待っているという「希望」があったが、こうなったらもう何もない、行きと同じ道をただ帰るだけである。

なので、夢を作った。

「温泉街に戻ったら、釜揚げうどんを食べよう」である。

それから着くまでに、何度「釜揚げうどん」と言ったことだろうか。

帰りは気温が下がってきたようで、もの凄く寒い。ダンナのリュックに雪が積もり始めていた。

ゴールはまた、宿泊した宿である。ここで釜揚げうどんを食べるのだ。

どえらい待たされて怒り心頭だったが、私はチンピラではないのだ、大人しく待つ。

どうも、こういう場所の食事というものは、イマイチで量が少ない傾向がある。

この旅で、とうとう腹が満足することはなかった。

強いて言うなら朝の粥ぐらいだが、これは「飲み過ぎる」という私の努力あってのものである。私の手柄じゃ。

次にはラーメンラーメンと言いながら、帰りのバスに乗る。

途中で降りて「甌穴」というものを見に行ったが、川に下りる階段に雪が積もっていて恐ろしく、上から写真を撮っただけで終わってしまった。次のバスまで30分。

どんどん気温は下がっているらしく、いよいよ寒くなってきた。いてもたってもいられない。

バス停の近くにカフェが1軒と、その隣に漬物なんかを売っている出店があった。

入りたいのはカフェだが、出店だって気になるじゃないか。

ちょっと近づいただけで、出店の隣に停まっていた車から、店主が飛び出してきた。

「バス、少ないでしょ。シーズンオフだから何もなくてねぇ。どこから来たの??」と、人懐こいオヤジである。

もう客なんか全然来ないから、試食、どんどん食べてって、と気前がいい。

人懐こい店主に気前がいいのは結構だが、こりゃ絶対に買わなきゃコースであるEE:AEB64ここで買わずに帰れる人は、相当度胸があるぞ。

・・・という訳で、山ごぼう買いました、500円EE:AEB64100円まけてくれたあたりが、複雑である。

カフェの方は、最高であった。

暖炉が入って暖かく、ギャラリーがあったりして時間つぶしもバッチリだ。

ダンナはビールを、私はカフェオレを。頑固な二日酔いである。

帰りの電車では携帯でひたすらラーメン屋を検索し、高崎からはグリーン車に乗ってとうとうビールを飲んでしまう。

なに、最初の1杯が入れば天国である。一中バンドの味がした。

大宮でラーメンを食べ、大宮からはグッスリ眠って新秋津だ。

長い旅であった。

ダンナをだまくらかして連れて出たのだ、彼は猫のご飯が不十分であったことを気にしていたが、可哀想に、ゴミを漁った跡があった。

サプライズのしわ寄せは、猫に行く。

それなのに猫たちは「帰ってきてくれた」とばかりに大歓迎である。

今回、サプライズの限界を見た気がする。

来年は大人しく、肉でも食べて過ごす事にしよう。