今、我が家の冷蔵庫の中には、猛烈に強烈に困ったものが入っている。
そもそもは困ったものなどではなく、それは嬉しいものであった。
しかし時が経ち、経つにつれ、それは困ったものへと変化していったのである・・・。
現実を見たくないのでそこには触れずにいたが、覚悟を決めてその賞味期限を見たら、軒並み8月の終わりであった。
普通に考えればもう、どう考えてもアウトだが、実はこれらはソーセージなのである。しかも真空パック。
もうちょっと大丈夫だろう、まだいけるだろう、と延ばし延ばしにしてしまった結果であった。
いくら真空パックといえど、その前提で賞味期限が設定されているのである。もはや挑戦の域だが、実はこういった勝負に私は強い。威張れることでもないがEE:AE4E6
鼻と手触り、最後は自分の舌だが、これらの判定で間違った結果になったことはあまりないのである。
逆をいえばなくはないのだが、ちょっと腹を壊すぐらいで、そんなものは毎週末の飲み過ぎの末路と大差はない。
とはいえ、季節が変わってしまった。ちょっと熟成が過ぎたか。
まだ開けてないので何とも言えないが、良くてもこれは、すでにレッドゾーンにさしかかりつつあるはずだ。
調理前にレッドの判定が出れば「もったいない」という被害だけで済むが、もしもギリギリのところでオレンジだった場合、何かしらの症状が出ることが予想される。
私などは専業主婦である。翌日トイレに何時間篭城しようが誰も困りはしないが、布団に入りたての大五郎みたいにゴロゴロいってるお腹を抱えて会社に行かなくてはならないダンナを思うと、この挑戦は、いつでもできる挑戦ではなさそうだ。
具体的にいえば休前日、しかも翌日に予定のない日が理想的だが、そんな理想的な日は、いつも飲みに行ってしまう。
こうしてソーセージは消費されず、夏からずっと冷蔵庫に入っているのだった。
このままではいつまで経っても食べる日はこないだろう。
捨てるのが嫌だったから、まだ冷蔵庫に入っているのに。
カタログギフトで注文したちょっといいソーセージと生ハムと鶏の炙り焼き。
・・・と、スーパーで衝動買いしたソーセージ2種。
意外と刺身を腐らせたことが少ないのは、短命であることがあからさまに分かっているからである。
燻した上に真空パックという、ある意味誘惑のような状態だ。気持ちも緩む。
鶴亀ほどのタフガイと錯覚し始めていたが、さすがにそろそろ何とかしないとヤバい気がしてきたのだ。
とは言っても、街に酒場がある限り、食べるチャンスがない。
では、ド平日に危険を冒さずに食べる方法はないか?
あるにはある。
私が試食してから出せば良いのである。イエス・キリストのような妻だ。
どれぐらい時間をみればいいのか分からないが、朝食べて変化がなければ夜はGOで良くないか?
朝からひとりでソーセージを食べるのは何となく切ないが、どうせいつもはもっと切ない朝食だ。
いけると判断したら、キャベツと煮込んで「ドイツ風」とか言って出してやろう。
そのプロローグとして、ひとパック開けてみたのだ。
ボロニアソーセージという脂のたっぷり入ったサラミのようなもので、形状は薄切りハムである。
買ったときにすでに半額に値下げしてあったものだ。捨てる覚悟でつまみ出したが、手触り、匂い、全然OK、というか、とてもいい匂いだったので、考える前にパクッと食べてしまった。
またこの展開。
いっそ賞味期限なんか、大幅に過ぎた方が美味しいのではないかと思うほどである。
思わず食らいついたので生だったが、これをそのまま家族に出すのはさすがに危険だ。
チーズと一緒に春巻きの皮で巻いて、弁当用に冷凍した。あとは揚げるだけ。
これは、全部いけるぞきっと。
近いうちにビールとソーセージでジャーマンパーティだ。
平日に飲むのは、違う意味で危険だが。