人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

世田谷区代田一丁目

座れば打った腰が痛い、寝れば頭のタンコブが痛い。

両肘は何もしなくても痛いが、スネのアザだけはなぜか平気である。

バンドのミーティングであった。

このように改まってこのメンバーで飲むこと自体が初めてでセンセーショナルだったが、壮大なドラマはむしろその後であった。

朝だ。

一度起きてダンナとも娘ぶー子とも喋っているが、まだ酒が抜けておらず、ほとんど思い出せない。

ただ、大事なものがなくなっていることに気がついた。

バッグだ。

聞けば、家に帰ったときにはすでに持っていなかったそうである。

バッグである。

携帯も財布も入っている。

「ない」では済まない。

あとでぶー子から聞いた話をまとめると、こうだ。

ドアを開けようとガチャガチャいう音がしたから、どうせまた酔っていると思ってぶー子が開けた。

玄関に倒れこんだ私は手ブラである。

バッグはどうしたかと聞いても、「うん」「ない」というばかりで会話が成り立たない。

ぶー子は、最後に行ったお店(PであるEE:AE595)に電話をした。

「確かにバッグは持たせてタクシーに乗せた」とマスター。

呼んだタクシー会社を聞き、すぐにまた電話。

怪しいのはここである。というか、ここしかない。

たった今、Pに呼ばれた奴はどいつじゃ、バッグがない、どうしやがった。

しかし答えは「ない」であり、ラチが開かない。

ここまで聞いて、私は前夜のことを思い出してみた。

見事に思い出せない。

Pを出た時の事も、タクシーを降りた時の事も。

もしかしてタクシーで寝てしまい、お金が払えず運転手に落っことされたか。

しかし問題の運転手は、お金はもらっていると言ったそうだ。

私は財布を出して、お金を払っているのだ。

それをわざわざ車に置いて行くだろうか。

かと言って、降りたのは家の前だ。バッグを落とすほどの距離でもない。

一応探したが、見つからなかった。

タクシーの運転手か、次に乗った客か。

いや、運転手は忘れ物はないか確認しないだろうか。

座席にバッグを残したまま次の客が乗る確率は、低いのではないか。

あぁ、もう、運転手が怪しい。

夜になったらまた電話して、私が直接話をしてその時の様子を聞こう。

カードと携帯を止めなくては。

二日酔いである。自業自得だが、辛い。

財布にはカードばかりではなく、免許証と保険証が入っている。

こればかりはカードのように止めることができないので、早く警察に届けたほうがいいと誰かが言った。思い出せない。二日酔いだがまだ酔っていた。

ひと通り止めるものを止めると、一眠りした。

起きたら私はひらめいてしまった。

携帯のGPSで、今ある場所が分からないだろうか。

分かるのだ。

有料だが調べてくれた。

それによると、その場所は・・・、

世田谷区代田一丁目とのことだ。

絶望的である。

誰かが私の携帯を、恐らくバッグごと、世田谷区代田一丁目に持っていったという事である。

一応そこに近い交番に電話して聞いてみたが、そういう落し物はないとのこと。

もう諦めた方が建設的だ。

あのバッグがなくなって困ることは何か?

オウノウッ、住所の入った免許証と家の鍵がセットになっている!!

最悪、入られてしまう。

鍵の交換だ。

電話で手配。明日来ます、2万円。

警察に届け、家に戻る。

もうできることがない。

いい人が拾ってくれたなら、もう届けてくれているはずである。

そして警察に、それはなかった。

悪い人が持っているということだ。

諦めると言っても、恐ろしい。

二日酔いもあり、すっかり私のテンションは下がりきっていた。

その時、怪しい男が我が家を訪れた・・・。

彼は朝、私のバッグを拾ったのだが、仕事に行くので時間がなくて交番にも行かれなかった。

遅くなってすみません、そう言って、フルセット入った私のバッグを返してくれた。

ええっ!?怪しい人じゃなかったの!?

私もダンナもペコペコと何度も頭を下げた。

お礼をさせて欲しいと言ったのだが、彼はいえいえとんでもない、と言って去っていった。

今度は止めたものをひとつずつ復活させていく。

みなさん、ご迷惑をおかけしましたEE:AE5B1

反省したいのだが、もう繰り返さないという自信がない。

「首からさげるバッグにしなさい」とダンナに言われる。

「首から鍵」をやっと卒業したのに。

ところで、朝方ぶー子がバタバタと動いてくれた訳だが、ダンナが帰らないので彼女は漣まで行ったのである。

しかし店はもう閉まっており、別のコースで家に戻ったらしいのだが、その途中で、スーパーの業者専用駐車場で寝ているダンナを発見。

バッグを枕にして、普通に横になって寝ていたそうな。

見つけてくれたのがぶー子で良かった。EE:AE5B1

しかし実は、昨日はぶー子の友達がうちに泊まっていたのだ。

一部始終を見られているが、すまぬ、ぶー子よ。

不甲斐なし。