花の精に会った。
間違いない、本物の花の精だ。
スーパーあまいけにて。
今日の買い物はニンニクと牛乳だけだったので、小さいスーパーに行くことにしたのだ。
買い物のメモすらいらないラインナップだったが、果たしてこの2つだけで帰れるだろうか。
そして危惧したとおり、予定外のものが買い物カゴに入る。
予定外で、予想外のものだ。
花、だ、やっちまった。
また不幸を繰り返すのか、ぽ子よ。
いいえ、こんなに美しいのですもの、今度は大丈夫EE:AEAAB
いつものやりとりが心の中であり、いつものように簡単に誘惑に負けて、花をカゴに入れた。色違いで3つ。
私は性懲りもなくウキウキしていたが、花の気持ちになってみたらこれは一大事である。
私に買われる、すなわちそれは、死を意味する。
花は泣いただろうか。
そして花の精はそれを聞き、私の許にやってきたのである。
レジで清算を済ませ、買ったものをエコバッグに移そうとしていたら、「あら綺麗ね」とダミ声のおばちゃんが私に声を掛けてきたのだ。
60代と思しき、短髪(ベリーショートというより、坊主刈りに近い)のふっくらとした女性だ。
「これ、見て御覧なさいよ、たくさん咲くわよ。」
この時私はまだ、彼女がまさかの花の精だとは気づいていなかったが、少々浮かれていたので私も機嫌良く答えたのだった。
「綺麗なので、3つも買っちゃいました。」
「ほら、葉っぱもこんなに綺麗で。これはとてもいいわよ。」
葉っぱなど気にも掛けなかったが、なるほど綺麗で丈夫そうである。
「いいわねぇ、こんなに若くて綺麗な人に買ってもらって」
え?!そう来る!?というか、その時私はスッピン隠しにマスクをして帽子を深くかぶっていたのだが。
「ハハハ、いえいえ、お花、そこで売ってましたよ」
照れ隠しでもないが、明らかに嘘だと分かったので話をそらす。
「こんなにいいお花買って・・・、ねぇ、若くていいわね~」
支離滅裂ですがな。ちょっと不安になってケチャップスリ的心配がよぎる。バッグを脇でギュッと締める。
「いいわねぇ、これはたくさん咲くわよ、大事に育ててあげてね。」
散々花と私を褒め称えて、おばちゃんは去っていった。
なに?今の。
ただの話好きで花の好きなおばちゃんだと思ってあまり気にしなかったが、帰り道でやっと分かった。
大事に育ててあげてね。
あいつ・・・、花の精だ!!
私が枯らさないように、クギ刺しに来たんだ!!
どうりであの不自然な会話・・・。
もちろん、最初から枯らすつもりで買ったことなどない。
ではなぜ枯れるのか。
水遣りを忘れることが一番の命取りだが、これは定着すれば何とかなる。定着するかどうかはこの際おいておくが、実はもうひとつ複雑な問題がある。
花にはそれぞれ特性があり、水をたくさんあげていいもの、ほどほどにするもの、日光に強いの、弱いの、と色々なのだ。
それを無視してただ水をあげているだけなので、お門違いの育て方をされたヤツは枯れやすい。
本来はひとつひとつどのように育てるべきなのかを知っていなくてはならないのだ。
という訳で、この花の名前が分かる方がいたら、教えてください。
「花」としか書いてないのだ(笑)
今度しくじったら、妖精じゃなくて悪魔が出てくるかもしれない。
妖精が出てくるとは、私の罪も、そろそろ裁かれるときが近づいてきたようである。