物を減らさなくてはいけないことは分かっていた。
とにかく物が多過ぎるのである。
それが収納場所をなくし、散らかる原因になっている。
もったいないといってただ何年もとってある物は、リサイクルショップやバザーに回すことに決めたが、なぜかそれだけでは片付かない。
滅多に使わないものは見えないところにしまう。
これだ。
しょっちゅう使うものなど、案外限られているものだ。
それ以外を見えないところにしまってしまえば、相当スッキリするんじゃないだろうか。
思えば家族以外の人を家に招かなくなってから長いが、もちろん原因は「呼べないほど汚い」からである。
猫によるものはもうどうしようもない状態だが、人間によるものは何とかできるのである。
そこでまずリビングとダイニングを見渡して見たが、どうにも邪魔くさくて生活感が染み出ているものがいくつか浮かび出てきた。
恐ろしい事に、一緒に暮らしているとその辺が麻痺してくるのである。
箱買いしたビールのケース、古新聞、リサイクル行きの紙を入れるダンボール箱。
これらはダイニングの壁際に並べてあるが、どれも大きいのだ、部屋を狭くしているし、なにより醜い。
しかしその大きさゆえに移動するにもそれなりの広さが必要で、かつ、使用頻度が高いので出し入れしやすい場所に動かさなくてはならない。
大まかに引越し先を絞ったが、今度はその引越し先の整理である。
酒蔵にしていた収納棚を縮小することにした。
酒蔵の中を改めて見てみると、奥の方は全然動きのないものばかりである。
つまり、忘れているのである。
高そうな酒ばかりだ。いただき物が多かったが、それゆえにしみしみ飲もうととっておいたまま忘れたのであろう。
大量の日本酒、泡盛、訳の分からない中国の酒。
積極的に飲みたいのは、比較的新しいワイン1本だけであった。
日本酒、泡盛もいいのだが、見ると製造年月日がかなり古い。
ネットで調べて見ると、風味が著しく落ちるだけで、飲めない事はないとの事だ。
普段安酒ばかり飲んでいるのだ、風味が落ちた高そうな酒の方がよっぽど美味いかもしれない。
という事で、これらを積極的に消費する事に決めたのであった。
問題は、訳の分からない中国の酒である。
1本は紹興酒だが、フルボトルだ。
ショットグラスで少しぐらいなら飲んだ事があるが、ボトル1本分EE:AE4E6
こちらもネットで飲みやすい飲み方はないかと調べたが、「苦手な方は料理酒にどうぞ♪」というぐらいで、バリエーションはほとんどなかった。
むー、仕方ない、飲みきれなかったら料理酒に決定だ。
そして一番困ったのは「竹葉青酒」と書かれた陶器のボトルである。
ラベルは全て中国語である、全くもって素性が分からない。
これもネットで調べてみるが、余計に困った結果になってしまった。
中国山西省の竹の芯芽を汾酒に付け、
さらに数種の漢方薬味を加え、加糖した
お酒です。ほろ苦さと甘さがほどよく
調和した黄緑色の美酒です。
竹の芯芽に漢方薬味、それに加糖・・・?
そして、これは自分には飲めないんじゃないかという思いを決定的にしたのは、
アルコール度数45度という文字であった。
45度。
私が普段良く飲んでいるのはウーロンハイで、悪酔いしないように25度のものを多目のウーロン茶で割っている。
仮にストレートでも25度である。
45度ってEE:AE5B1
そりゃ酒だ、飲もうと思えば飲めるだろうが、後の責任は誰がとってくれるのか?
こんなもの飲んだらあっちゅー間に「降りる」ぞ。
妖精なんて生易しいものじゃない、きっと悪魔か大型の動物が降りるだろう。
困った・・・。
しかしこの「困った」は、飲んでみたいかもしれない「困った」でもあるのだ。
他にも昭和43年から数年分の古酒など、「困った」ものがたくさんある。
アルコール度数の低くて比較的美味しそうなものから飲んでいく努力をするが、部屋が片付いた暁には早速誰かを家に招き、この「竹葉青酒」の餌食にすることに決めた。
恐らく紹興酒も残りそうな気がするので、みんなでパンダになろうと思う。
そして昨日早速高そうな日本酒を1本空けたが、完全に風味が飛んだただの日本酒であった。
熱燗にして飲んだ。
翌朝全然残らず後腐れなかったが、アルコールも飛んでいたのであろうか。
何だかアホらしい事をしている気がする。
今後、高い酒はすぐに飲んでしまおうと思う。
滅多にないだろうが。