人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

思い出の効用

水曜日だと思って油断していた。

旅行へ行って1日休んだので、ポジション的には月曜日じゃないか。

そんな地獄の日に、よりによってモデルのバイトが入っていたとは。

前回私を苦しめた症状は、

・眠い

・痛い(ポーズによるもの)

・痛い(クッション材が不足していたため)

の3つだったが、次回はこれを軽減すべく、色々対策を考えてあったのだ。

しかし月曜(世間は水曜日である。げっ、もう週の半分まできていたか)のせいで、どれも行動に移すことができなかった。

たったひとつできたことは、これまでいつもやってきた睡魔対策の「寝不足をしない」であり、それにより午前中は丸つぶれだ。

起きてシャワーを浴びてスパゲッティを食べたら(サッポロ一番を切らしていた。痛恨のミス。塩ラーメンはあったのだが、あれは異人さんであり言葉も通じないのだ、意志の疎通すらできない)もう会場に向かう時間だ。

ぶっつけ本番のように行った先で色々工夫したが、お尻に敷くクッションを増やした事で痛みは少なくなり、隙を見て勝手にポーズを崩した事で、さらに楽になった。

しかし、睡魔だけはどうにもならない。

15分ポーズをとり5分休憩、の繰り返しだが、2回目のポーズとりでもう激睡魔だ。

実は考えてあった対策とは、「ミンティアのハード(カフェイン・カプセル配合のヘビーユーザー向けの超強力ミントタブレット。辛い刺激感がクセになるおいしさです)」を側に置いてちょいちょいつまむというものだったのだが、時間がなくて買えなかったのだ。

というか、時間なら1週間もあったのだが、すぐに買わないからこういう事になるのである。

何かワクワクするような楽しい事を考えようと思うのだが、楽しい事は幸せ成分セロトニンを生み出すのか、余計に眠くなる。

あまりに眠くなると何も考えたくなくなり、何も考えないと寝てしまいそうになる。

何か眠くなくなるような考え事はないのか。

そこでふと、おととい見た夢(昨日ではないところがぽ子である)を思い出した。

以前働いていたクリーニング工場でまた働く事になった夢だった。

仕事はキツかったが、私はあの仕事が大好きだった。

真夏の炎天下で、真冬のふきっさらしで、山のような洗濯物と格闘していた毎日。

重いリネン袋を引きずり、高速でポケットの中を点検する。

ハタチそこそこの小娘にタメ口でコキ使われ、熟女の上司からはイヤミを言われ、肉体的にも精神的にも辛い仕事であった。

だから私は誓ったのである。

仕事を覚えてきて重宝されるようになったら突然辞めてやると。

それが7年だ。

気がついたら小娘の片腕となって職場を切り回していた。

結局、仕事が好きだったのだろう。

私はその仕事をひとつひとつ思い出してみた。

あぁ、キツかった、大変だった。

しかし妙に懐かしい。

「はい、休憩です。」

えっ??

いつの間に睡魔は飛んでいた。

何、この効果??

私は次の回も、クリーニング工場を思い出して過ごした。

こ、これは。

イケる。

精神科医なら理由が分かるかもしれないが、とにかく私はマルイチクリーニングの事を考えると目が覚めるのである。

これは大収穫だが、思い出は過去の出来事である、限りがある。

つまりいつか底をつく訳で、その時が私の眠り時という事になる。

覚醒と思い出の因果関係が分かれば他に応用が利きそうだが、残念ながらそこまでには至っていない。

なのでチビチビ思い出し、すぐに忘れるように努めた。

この仕事はあと1回で終わりである。

あと1回ぐらいならイケるだろう。

それが終わったら、今後の睡魔のために、クリーニング工場の思い出は封印する。