眠れんかった・・・。
あのあと開き直ってワインを飲み始めたが、寝起きでたくさん飲めるものでもない。
ダンナも同じ様に目が覚めて飲み出したが、ゲーム(今回も性懲りもなくPS2を持って行った夫婦・42歳)をやる程の気力もなく、ボケーッとテレビを見ていた。
こういう時は時計を見ない事を鉄則としているので正確な時間は分からないが、恐らく2時頃だろう、酒も進まず、やる事もやる気もなく、翌日のことを考えて再びベッドに入ったのは。
しかし、状況は悪い。
極めて悪い。
私はそもそもが眠り下手だが、外泊となるとさらに難易度が上がる。
それは主に緊張とオバケ怖さが原因だが、その上、中途半端に寝てしまったのである。
全くダメだ。
全く眠れない。
怖いので、電気もテレビもつけっぱなしだ。
装着するだけで痩せるベルトと、それひとつで何役も兼ねる化粧品と、車のキズが消える魔法のペンのTVショッピングの長い長い繰り返しを目を閉じて聞くともなしに聞いていたが、やがて「長野チャンネルの放送を終了します」という声が聞こえて来た。
途端にカッと目が開く。
テレビが終わる。
恐れていた事態である。
テレビが消えるなんて!!
急いで起きてチャンネルを変えたら、ショップチャンネルという、またしてもTVショッピング専門のチャンネルが辛うじてまだやっていた。
何でもいい、テレビが能天気についていてくれればいいのである。
ショップチャンネルは目を閉じてオバケの恐怖と戦っている私に懸命に洋服を売り込んでいたが、それどころではないのだ、私は少しでも眠りに近づけるように、楽しい事、楽しくない事、色々な事を色々な方面から考えて過ごした。
いつしかその番組は終わり、天気予報になった。
爽やかな曲が流れている。
私の次なる恐怖はこのチャンネルが終わる事だったが、ついにテレビから「おはようございます」という声が聞こえて来た。
目を開けて窓の方を見ると、明るい光が漏れて入っていた。
「ちくしょー、朝になってしまった」という忌々しさと、「これでオバケの時間は終わった」という安堵で、睡魔とアンチ睡魔の半々のバランスにまで漕ぎつけた。
しかしこの状態は、私の中では睡魔優位なのである、半分もあるということは。
やがてウトウトしていたら、ダンナに起こされて朝だ。
朝ご飯も食べ放題である。
昨夜の二の舞を踏むように意識して食べ過ぎ、出発寸前まで眠る。
明るければ寝るのは得意なのである。
ダンナは私の「スピー」という寝息を聞いた、と言った。
旅行は好きなのだが、こういう事が多いので困る。
どこでもすぐに寝れる、という人が本気で妬ましかった夜であった。