「はぁ・・・。」
「ああ・・・。」
「緊張する・・・。」
前回「P」に行ってから一週間。
座りゲロを繰り返したダンナと、それを放置して酔っ払っていた妻。
恥、というよりも申し訳ない気持ちで一週間を過ごしたが、このままにしておく訳にはいかない。
「P」は単なる飲み屋ではないのだ。
私達の楽園を失いたくはない。
酒の上の失敗ならダンナよりはるかに私の方が多く経験してきたが、こんな時の結論はただひとつ。
「あれはたまたまだったのだ、普段はちゃんとしている」という実績を作るのみである。
その実績を積みに、早速出向いたのであった。
シラフで出向くほど図太い神経ではない、まず居酒屋で飲んだのだが、緊張で酔いが回らない。
11時に諦めて、緊張したまま手土産を持って「P」に向かった。
まずは外から、ガラスのドア越しに中の様子を覗きみる。
いつもそうしているのだが、そうすると大抵マスターが気付いて出てきてくれるのだ。
昨日も私たちを認めると、マスターはいつものように笑顔でドアを開けた。
良かった、いつものマスターだ。
私たちは何度もペコペコ頭を下げ、スタッフにもごめんなさいすみませんと繰り返してから席に着いた。
フー。
ひと仕事終えた感。
やっとリラックスして飲むことができる。
「あ。」
先週は私も泥酔していたが、同じように酔っ払ってフラフラしていた女性がいた。
酔ってしまうと私は顔を記憶に残すことができなくなるが、どうやらもう一度見れば思い出せるようである。
アナタ、先週の。
「ぽ子ちゃん!!」
向こうは名前を覚えていてくれたから、私よりも偉い。
しかし今週の私は先週の私ではない。
彼女は今週もいい具合に酔っていたが、冷静に見ると凄い事になってるね、こりゃ。
私も先週はあんなんだったのか。
しかし私は酔っ払いが大好きなのだ。
同じ血を感じる喜び。
同胞。同志。同じ穴のムジナ。
この頃はお客さんの数も多くなり、週末ともなるとほぼ満席である。
人が増えたのだから、演奏の上手い人の割合も上がる。
なので私の恥ベースおよび恥ピアノの出番は激減したが、昨日は恥歌である。
オールディーズをやるオッサンと隣り合わせ、意気投合して「Be My Baby」、「Loco Motion」、「Vacation」を歌った。
歌詞が分からない。
ニャニャニャで歌った。
時間が経つにつれて客も減り、最終的にはカウンターに常連が残った。
実は、以前に何度か書いたことのあるスーパードラマーあっちゃんが、翌日大分に帰るという事であった。
とっても優しくて暖かいあっちゃんは、ドラムも優しくて暖かい。
あっちゃんがいなくなるのは、本当に寂しい。
急なことで驚いたが、「最後に演ろう」とステージに上がらせてもらった。
で、いつものナンバーだ(笑)なぜあっちゃんに合わせない?
もう良く覚えてないが、「Smoke On The Water」、「移民の歌」、「天国への階段」、「Helter Skelter」、そんなあたりだったか。
なんでも叩けるあっちゃんである。
店を出たのは4時だ。外はもう明るい。
憧れの「和〆(上司グッティ氏が非常に強い意志を持って、酒の後に食べるラーメン屋「和」の一杯のことである)」を果たし、やっと家路に向かう。
気がついたらソファで寝ていた。
緊張して飲んでいたからか、あまり酒は残らなかった。
しかしタバコで喉が痛い。
もう本当に止める。
これでは全く禁煙にならないじゃないか。
しかし楽園での1本は格別なのだ。
夢の楽園、POPROCK。
日常から離れて別の自分になってもいいじゃないか。
開き直りつつあるぽ子であった。