人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

消えたパートナー

月曜日である。

比較的早く二度寝から目覚めることができたので、ベースの練習をしようと思った。

週末は酒と二日酔いで、ほとんど手にしなかったのである。

それにしても、全く上達しない。

「簡単簡単♪」「イケルイケル♪♪」と思ったのは最初のうちだけで、この頃は弾けば弾くほど下手になる気すらしている。

つまり、やっと現実が見えてきたのである。

そこへ、ピックがなくなった。

ピックというのは弦を弾くための小さな薄いプラスティックの板の事だが、いつも弦に挟んでおいたのに、なくなってしまったのだ。

小さなものだ、なくなること自体は不思議でもないのだが、実はあのピックは私が初めてベースを弾いた時から愛用している25年ものなのである。

別に何の変哲もないピックだが、大き目の正三角形をしていて弾きやすいので気に入っていた。

16歳の当時、バンドでベースをやる事になった時に、誰かが置いていったものである。

そんなに大事にしていた訳ではないのだが、数回の引越しも乗り越えてまだ手元にあったのだ。

そんなピックだったので、リッケンを買うぞ、と再びベースに挑んだ時には迷いなくこれを選んできた。

その後ずっとベースと対になっていたはずなのだが、とにかく消えたのだ、突然。

そしてそれは、「ダンナが私のベースに難癖をつける」とダンナに難癖をつけた次の日になくなったのだ。

もちろんそんな事はないのは分かっていたが、腹の虫が収まらないので「ダンナがなくした」と絡み、ダンナのお気に入りの未使用のピックを勝手に持ってきて使うことにした。

たのきんトリオの一味がいたバンドのネーム入りだぜ、ピンクの(笑)

「ちょっと、よりによってそのピック・・・。」

我が家のピックは今となっては必要なくなった灰皿にゴッソリ入っているが、その中からこれを選んだ事に彼は不満そうであった。

そして、「これでいいでしょっ。」と別のピックを持ってきて、ベースの弦に挟んでいった。

レインボーカラーの綺麗な色で、形も前のに良く似ている。

ところでよっちゃんバンドのピックを使うようになってから、私はどんどん下手になっていったのだ。

嘘ではない。

よっちゃんピックも一応正三角形をしているが、ちょっと小さい。

この「ちょっと小さい」が気になって気になって、それが命取りになっているような気がしてくるのである。

なので、弦をスカッて音が鳴らないのだ。

今まであったところまでの大きさがないので、弦に届いてないのである(笑)

もちろんそんな事はあり得ない話だが、私はもう「無理だ、小さい」と思い込んでいるので、むしろ自力で届かせていないのだろう。

思い込みに弱いのである。

すっかり調子が狂ってしまい、ダンナが後から持ってきたレインボーカラーのものも、どこかが違う気がして手に馴染まない。

アレじゃなきゃダメなのだ、私には。

あぁもうこのままどんどん下手になっていくのだろうか。

テンション激下がりで、練習にも気が進まないのであった。