二人で歩くには少しコツが要る
君の歩幅は狭い
できるだけ時間をかけて 景色を見ておくよ
振り返る君のいる景色を
BUMP OF CHICKENの「スノースマイル」だ。
寒い冬を大切な彼女と過ごした日々を歌う、心温まる歌である。
彼に限らず、大体男性のほうが歩幅が大きく、また、女性は歩きにくい靴を履いている事が多い事もあって、「二人で歩くには少しコツが要る」ものである。
歩調を合わせるのは男性サイドだろうから、コツを必要としているのは男性である。
私も良く、特に人の多いところでは、ダンナに置いていかれそうになる。
そのたび、「あぁそうか、忘れてた」と言って歩調を落としてくれるのだが、人ごみを歩くのにも「少しコツがいる」。
通勤で慣れているダンナはもうコツは良く分かっているのだが、コツを押さえて歩くと私が置いていかれるのである。
なのでこういう時は、「二人で歩く」時のコツの方を選ばざるを得ないのである。
今日は、幡ヶ谷でラーメンを食べた。
京王線なんて初めて乗ったんじゃないかと思うが、きちんと考えてみたら何度かあった。
ただし、それは「高尾山口」であり、何となく京王線とは言い難い。
新宿からたったの二駅なのに、まず京王線までムチャクチャ歩かされ、新しい駅では乗り方が分からず、乗ったら乗ったでその電車は幡ヶ谷を通り越して一気に笹塚まで行ってしまった。
京王線は難易度が高いので、しっかりと下調べをしてから挑む事をお勧めする。
そしてまた、食べ過ぎた。
私はスープを残したからまだ良かったが、最後にリゾットをぶっ込んでスープも全部飲んだダンナは、昨日同様「痛い」「苦しい」と泣いていた。
しかし、ラーメンとは意外と塩分が高いものであり、後には渇きが襲ってくるのだ。
「いろはす」とかいう水でしのいだが、やがて「じゃあどこかで飲むか」という事になった。
まだ時間帯が早いので、ドリンクが安い店が多い。
あれこれ迷っていたが、ん??まだ4時半か。それなら急げば間に合う。
地元の駅前に、5時から1時間ドリンクが半額になる店があるのだ。
「急ごう。」
私たちは西武新宿駅に向かった。
酒が、半額が。
私の方がダンナより前を、早歩きで歩いていた。
振り向く時間も惜しい。どうせついて来れるだろう。
コツなど要らない、しっかりついて来いや~~~!!
人ごみをすり抜けて行く。
躊躇するから遅くなるのである。
この隙間、この隙間、と狙いを定めたらそこをスッと抜けていくのがコツだ。
こうすれば人より早く進むことができる。
ダンナよ、驚いたか。
私はできないのではない、やらないだけである。
その能力は、この日のために温存してあったのだ。
窮地にしか現れない、ヒーローのようなものだ。
「電車、ちょうど来てるよ!!」
発車時刻までは分からないが、急ぐに越したことはない。
気がついたら走っていた。
「も、目標があるって凄い事だね・・・。」ダンナがボソッと言った。
人生に迷っている人がいたら、居酒屋「むらやま」の半額セールの存在を教えてあげるといい。
15分ほど過ぎてしまったが、席はまだ空いていた。
軽く飲んで出たが、外は陽が落ちてすっかり冷え込んでいた。
だからと言って、私の冷えた左手がダンナの右ポケットにお招きされるような事はもうないのだが(笑)